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[コメント] ニライカナイからの手紙(2005/日)

母(南果歩)の帰りを待つ娘・風希(蒼井優)、それを黙然と見守るじじ(平良進)の抑えた演技も確かながら、沖縄竹富島の島民の助け合い、労わり合いの描写がすばらしい。愛情と思いやりにあふれた作品。泣きました。
スパルタのキツネ

**ネタバレ注意**
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東京都渋谷一郵便局から毎年送られてくる1通の手紙。母の手紙はニライカナイからの手紙だった。港の防波堤に設置された赤いポスト。それは風希の想いをニライカナイの母の元へ届けるポストだったのだろう。 井の頭公園で母娘の抱えるガラス球の光り輝く写真を撮れたとき、母の心が誕生日より一足先に頑張る風希の元に赴いていたのではないだろうか?

祖父の心境を考えると複雑だ。14年間、風希に事実を隠してきたじじ。それは14年間、風希の母・昌美を公私に渡り弔えなかったことも意味する。母のこととなると最後の最後まで風希に無言だったじじ。 その寡黙な描写には14年間の苦悩と、こうして母・昌美の遺影の前で立派に20歳に成長した風希を迎えることができた安堵をも感じさせる。じじは、それまでずっと娘を信じながらも、その事実にショックするであろう風希を思い、不安な日々を送っていたことだろう。黙して母との約束を誠実に守り続けることが、じじに出来る唯一のすべだったのではないだろうか?

じじが風希の東京行きを即座に認めず、出航時も見送らずにただ島の神に祈る姿には、風希が20歳の誕生日を迎えることになる東京で、精神的に参ってしまった場合、事実が風希をさらにどん底に落としいれることになりはしないだろうか? という切実な心配も読み取れる。 風希の表向きの目的は写真だったが、母に会いたい気持ちのほうが勝っていたのは誰の目にも明らかだったから。そんなお互いの気持ちを思いやるニンニク漬けのエピソードに心が洗われる。

さて、母の手紙がすべて14年前の生前に書かれた物であったという結末には、少なからず賛否が分かれることだろう。自分だったら許せるか? おそらく許せないと思う。 しかし、本作では、以上のようにじじの心の痛みと母親の愛情に折り重なるように、壁にぶつかりながらも健やかに成長していく風希を心を込めて描いており、その賛否を凌駕していた。

またバックグランドに添えられた島のリズムの穏やかなこと。 家族を取り囲む島民の思いやり。キジムナも母も「信じればきっと存在する」とのばあさんの言葉。いつも側にいるカイジ(金井勇太)の存在。 竹富島の自宅前に列を成して風希を励ます島民に私は涙が止まらなかった。

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (2 人)パグのしっぽ[*] リア

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