[コメント] バットマン ビギンズ(2005/米)
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ついこの前「マシニスト」見たばかりという印象なのに、クリスチャン・ベールが骨と皮男から大幅増量してビックリ。そこまで筋肉つけてはコウモリの俊敏な動きはムリでしょ。バットマンというより熊男みたいな。
クリストファー・ノーランは、さすがの細かい心理描写。前半は「インソムニア」のアラスカ白夜みたいな氷雪ワールドにヘンなアジアンテイストも盛り込んでみっちりとブルース・ウェインのトラウマを解き明かす。とにかく全篇にわたってシリアス調。バットマンの衣装も手造りだし。
でもね、リアルに振れば振るほど逆に矛盾が吹き出てきちゃうんですよ。あれだけ暴れて建物や電車壊して(福知山線の脱線事故みたいで楽しめなかった)死人が出ないわけないじゃん。奇麗事なんですよ。
話が善悪の戦いならシンプルだったが、人類の繁栄と腐敗、破滅の歴史サイクルにまで遡るある種哲学的な命題まで持ち込んじゃった。それなのに、あくまで個人で都市ゲリラかテロリストみたいな闘いの挑み方。金には困っていない御曹司なのでそれもいいかもしれませんが、ゴッサム・シティへの愛着なんて後から取って付けたようで庶民感覚は無いに等しい。終盤で正体が割れた黒幕との対決になるけど、あっちの言うことの方が正しい気がしちゃうんです。
チクチクと文句言うのはやっぱりティム・バートンの「バットマン」と比べてしまうからで、キッチュな世界観とニコルソンの毒気のある笑いはとっても魅力的だった。今回はスケール感がアップして後半の畳み掛けるアクションも息もつかせず、娯楽映画としてのクオリティは相当なものだが、監督の作家性という部分ではブルース・ウェインの内面を描こうとして結果的に破綻をきたしていると思う。
「インソムニア」よりさらに格段に大作のプロダクションになって、脚本こそ共同で手がけているものの、コンビを組んできた音楽のデビッド・ジュリアンは外されて大先生のハンス・ジマーとジェームス・ニュートン・ハワードの双頭体制に。普通に考えてアクションや大作っぽい格調付けの部分はジマー先生で、センシティブなメソメソ場面ではハワード先生かな。
ティム・バートンと比べてしまう上に、「フォロウイング」や「メメント」の尖った切れ味を求めてしまうのでどうしても物足りない。ハリウッド大作では彼の持ち味は出ないと思うけど。ヒロインの絡ませ方なんか解せない。自分の好みとしては彼女を振り切ってブルース・ウェインの孤高を引き立たたせて欲しかった。
なんだか、丸顔で乳の目立つヒロインといい、電車を止めようとする終盤のアクションといい、どっかで見たデジャブ感アリアリ。そういえばサム・ライミ監督に包帯グルグルにされて爆発で吹っ飛ばされてた人が、すっかり徳のあるヒーローイメージを逆手に取ったハジケっぷりでございました。
あと、やっぱりクリスチャン・ベールのマスク顔はギョロ目じゃないし唇も薄くてマヌケぽい。マイケル・キートンのクチビルにはかないませんよ。(☆3.5)
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