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[コメント] サラ、いつわりの祈り(2004/米=英=仏=日)

サラの行動に不可解な点があっても、それが幼いジェレマイアから見た、彼の視点での母親像として、そういう脚色で許されてしまうのが評価の難しいところ。
わっこ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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突然現れた実母と生活にすることになった少年の映画。J・T・リロイの自伝的小説をベースに映画化している。

序盤で出産後里親に預けたジェマイアを突然引取りに来た理由がはっきりしなかったり、その後数年間再び失踪し、そしてまたジェレマイアを引き取りに来たりと、ジェレマイアの母親サラの行動に不可解な点があっても、それが幼いジェレマイアの視点から見た母親像としてそういう脚色で許されてしまうのが、評価の難しいところ。

原作の意図からすると、息子を愛しながらも母親としての接し方を知らずに虐待を繰り返してしまう母親とそんな母親に虐待に遭いながらも一途に母親への愛を求める息子の複雑な母子愛がテーマになっているわけだが、映像としてみるとサラは女装したジェレマイアが恋人に色仕掛けをしレイプにあっても、恋人よりもジェレマイアを非難するなど、あまり息子を愛しているという風には映らないし、虐待の裏に潜む家族愛というものが感じられない。

ただ、現実問題としてこの映画のサラのように、親が子供を愛しながらも接し方を知らずに虐待を繰り返してしまうというケースは日本でも実際にあることなので、親の幼児虐待に潜む心理描写には興味深いものがある。

しかし、虐待を繰り返す母親と息子の他人には受け入れがたい複雑な愛情を描きたいのなら、前半で幼少のジェレマイアとサラのエピソードはもっと描くべきだったのではないだろうか。編集上の都合なのか幼少のジェレマイアのエピソードは連続映像が多く、幼少期のジェレマイアの心情が描ききれず、少年期のジェレマイアがサラに愛情を求めるという説得力に欠けていて、終盤で麻薬中毒に侵されたサラに従い続けるジェレマイアの行動もどうにもしっくりこない。

映画としてはサラとジェレマイア親子の家族愛よりも深刻な幼児虐待の方が全面に押し出された感じで家族ドラマとしての印象がやや薄くなってしまった。

(評価:★3)

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