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[コメント] ガラスのうさぎ(2005/日)

描線は古風だが丁寧に画面はまとまっている。どちらが優れているというつもりはないが、'79年の実写作品と並べてみると敏子の意外な側面がアニメには垣間見え、非常に興味深い。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ふたりの兄は少年時に志願兵として入隊する。その事を小さい妹たちは寂しがるのだが、「わたしもすぐ従軍看護婦として南方へ行くんだからね」と叱りつける姉・敏子は立派な「愛国少女」である。

そして父に撃ち込まれた米軍戦闘機の銃弾を握り締め、敏子は「鬼畜米英」に復讐を誓う。終戦後、子供たちにチョコレートを配る米兵に敏子は一撃を加えようとするが、果たせない。それどころか、米兵の落としたペンダントに彼の家族写真を見た彼女は、それを返してやり米国人といっても鬼ではないことを悟る。このあたりのストレートさは『美しい夏キリシマ』を彷彿とさせるが、観客に銃後の少年少女の本音を理解させる重要なエピソードだ。

また、敏子にヘッセの詩集を託し、自らは敵艦に特攻して果てる学徒兵のエピソードも、その当時を幼年観客に理解させる重大な意味を持つ。概して、戦争について無知である世代への啓蒙的性格は、アニメ版のほうがより濃いとみていいだろう。

最後に、大島ミチルの大概の劇伴音楽は大仰すぎてあまり好きではなかったのだが、この映画では彼女は実にいい仕事をしている。エンディングの歌などは心地よく耳にこびり付いて離れない。

(評価:★4)

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