[コメント] 頭文字〈イニシャル〉D THE MOVIE(2005/香港)
香港映画で日本を舞台にした作品を作ると、大抵トンデモ日本的な風景・人物・習慣など が登場し、日本人には違和感が残るものであるが、本作品は群馬の田園風景や町並みが 上手く作品に溶け込み、違和感がない。日本が舞台で日本人の登場人物なのに広東語を 喋ると言うのが最大の違和感ではあるが、前半以外は気にならなく観賞出来た。 ジェイ・チョウ演じる寡黙な主人公もらしさが出ているし、鈴木杏演じる ヒロインの魅力は出色の出来だ。チャップマン・トー演じるイツキのキャラはやり過ぎだが、香港映画のお約束と考えれば納得もいく(鈴木杏のわかり易い清純さも昔の香港映画のヒロインらしくもある)。
実写ロケのカーアクションシーンはさすが香港映画!といえるほど迫力があり、これが香港作品として撮影された最大のメリットだと思う。CGに頼らず、まさに迫真のバトルシーンだった。原作ファンで細かな設定に不満がある人も、カーアクションシーンには満足できたのではないか。これが日本映画だったら、もっとこじんまりとした安っぽいVシネマ的な作品になったに違いない。また、原作のエッセンスを抽出し、2時間で上手くまとめて良質の娯楽作品に仕上げているのはエンターティメントに徹する香港映画界の面目躍如と言える。
他のコメンテーターの方々より私の評価が高いのは、私がコアな頭文字Dマニア ではない事が影響しているのかもしれない。 アニメや小説を原作に映画を作るというのは非常に難しい賭けだ。 漫画や文章で語られる原作に比べて、2時間という枠の映画ではエピソードなど詰め込むにも限りがあるし、2時間の枠内である程度起承転結で話をまとめないと鑑賞者は満足しなだろう。原作のファンも凄い期待を持って劇場に行くので、その高い期待値のハードルを越えるのは用意ではない。私は原作の頭文字Dを一通り読みはしたが、影響されてAE86を買い、峠を攻めているようなコアな原作ファンではない。もっとも実写版映画を見ようと思うくらいなので、ライトなファンである事は間違いないが、原作の影響よりも、香港映画ファンである事が大きく影響し本作品を鑑賞した為、評価が高くなったのかもしれない。
香港やマカオでは土地が狭く、一般人はなかなか車を持てない環境にあるが、 話をしてみると皆、今の日本人より車に対する関心は非常に高いように思える。車に対する飢餓感というか渇望があるのか、車を持っている人も物凄く愛車を大事にしている。 加えて香港では日本の漫画作品が良く読まれており、そういうバックグラウンドも本作を制作する下地になったといるのだろう
コアな頭文字Dファンが見たら不満に思うディティールもあるが、一本の香港アクション映画としてみれば、アクションの出来や、原作のエッセンスをうまく2時間で話をまとめてエンターティメントとしている点などを考えても、なかなかの佳作だと思う。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。