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[コメント] 花籠の歌(1937/日)

銀座の俯瞰。川と橋。右へパンニングすると、煙突やアドバルーンが見える。カットを変えて、柳越しに服部時計店をとらえたカット。手前の柳にピントが合っている。本作の舞台は銀座のとんかつ屋。
ゑぎ

 店主が河村黎吉で、その娘が田中絹代。従業員として、料理人の李さんを徳大寺伸が演じ、出雲八重子が女中だ。彼らと店の常連の大学生2人、佐野周二笠智衆が主要登場人物。

 主人公は田中絹代で、いつも通り、所作も表情もよく動く。快活な田中を見ているだけで楽しくなる、というのもいつもの通り。また、これも予想通り、田中と佐野の恋路の話になるのだが、序盤は、笠智衆の方が活躍する。佐野より先に登場し、徳大寺と田中との関係を捻じ曲げてしまうのだ(田中に気のある徳大寺は、田中も自分に気があると誤解してしまう。ちなみに、出雲八重子は徳大寺に気がある)。しかし、本作全体を通じて、役者としては、二枚目役の佐野よりも、三枚目の笠智衆と徳大寺の方が、印象に残る儲け役だと私は思う。

 その他の役者で特記しておきたいのは、まずは田中の叔母さん岡村文子。得意のしっかり者のうるさ型キャラだ。彼女が電話をかけるカットで、屋内ドリーの寄りを使ったのには驚いた。他に目立つドリーカットは記憶にないので、特別な人物、という印象になる。あと、まだ十代前半の高峰秀子が田中の妹の役で出て来るが、法事のシーンと、終盤の店と家のシーンぐらいしか登場しない。しかし芸事の稽古に通っているらしく、「いつになったらスタアになれるんだろ」という科白がある。これは当時既にアイドルだった彼女とのギャップを狙った、クスグリなのだろう。そして、佐野を取り調べるためにやってくる刑事役の斎藤達雄が、ワンシーンのみだが、強烈だ。いつものコメディ演技を抑えて、終始シビアな怖い刑事、というのがいい。

#備忘

・とんかつ屋の2階の部屋から、服部時計店の時計台、明治チョコレート、風車、流れ星のネオンサインが見える。多分、これらは、ミニチュア模型だ。

・寝込んだ徳大寺に田中があげるのは浅田飴。

・実はタイトルの意味はよく分からなかった。法事のシーンで近衛敏明から贈られたのは花籠か?しかし、これとタイトルとは関係なさそう。

(評価:★4)

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