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[コメント] 舞妓と暗殺者(1963/日)

三隅モノクロの充実作。提灯の映画であり、高田美和の丸顔(及び夏蜜柑も)と相似形を描く処に箆棒な妙味がある。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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「壁を砕くんだ」の津川雅彦のサルトル的革命は、相手方もまた壁と云いだして中和される。どさくさ紛れの内部の権力闘争は政治の季節をあらかじめ戯画化したようだ。「分派的分裂」はいけない、という台詞があり、ここで客席から笑い声が漏れていた。学生運動を揶揄した台詞なのだろうか。脱藩者を影で操る長州藩、「若いのは騒ぎを起こして(政権を)動揺させろ」というのはテロルの右翼的発想だろう。それで脱藩者は吉田松陰を投獄した面々を襲い続ける。

本作の高田は箆棒で、風呂の裸の驚きから、収束の(殺陣の興奮から)身を任せる爆発に至るまで、いろんな処で驚きがある。舞妓の舞も美しいし、路地裏の失踪が素晴らしい。 提灯の使いまわしがいい。最初、刀で切られて路上で砕けるのだが、その後は高田の手で丁寧に灯りをともし続ける。雪(舞う羽毛)や桜で坂道の四季の移ろいを描き続ける。高田が帰省した折、夜なべで機織りする妹は高田を一度も振り向かない。ただ陰気に機織りを続ける。新藤的人物だと思った。

(評価:★4)

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