[コメント] 野獣たちのバラード(1965/露)
また、冒頭すぐの、子供はお母さんが一番好き。お母さんも子供が一番大切、という部分で既に泣きそうになる。本作は、主にナチスドイツの所業について膨大な公的・私的アーカイブフィルム(動画及びスチル写真)から編集してまとめられたドキュメンタリーだ。絞首刑になった死体数体がぶら下がっているのを仰角で撮ったショット(動画)は、他でも何度か見たもの、というように、他の映画やドキュメンタリー番組でも使われている既視感のある断片も今となってはある。しかし、目を背けたくなるような惨いショットは多くない。惨殺した死体と一緒に記念のように撮られた写真がドイツ兵のポケットから多数見つかっている、という事実は衝撃的だったが、これも私が知らなかっただけで、有名な話なのかも知れない。
映画界に関係する有名人としては、マレーネ・ディートリッヒ、キャブ・キャロウェイが出て来る。キャロウェイが1930年代の狂乱を伝える象徴のような取り上げられ方をしているのには違和感を覚えた。また、ナチスドイツに迎合したスター女優として、マリカ・レックだけが紹介される。何かの映画の断片なのか、彼女のセクシーダンスを見ることができる。
また、ドイツにはナチスにノーと云った人たちもいた、という部分も僅かだが出て来てバランスを取る。私としては、ヒトラーの最期の様子にも肉薄して欲しかったと思った。終盤の、この映画が作られた当時(1965年)のナチスの残滓の状況を説明する部分では、ヘスは監獄でまだ生きている。西ドイツだけでなく、例えば米国でもネオナチの組織がある。という警鐘を鳴らす。あるいは、戦争で儲けたドイツの財閥−クルップ社は今でも健在だと突き付ける。ナチスドイツを代表としてファシズムを批判しているが、勿論、言及はされないけれど、自国ソ連も含めた全体主義に対する批判の映画だと感じる。観客の感じ方次第だろうが。
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