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[コメント] 旅役者(1940/日)

なんて面白い!脚の映画。人の脚と馬の脚。藤原鶏太が前肢で、柳谷寛が後肢。馬の脚専門の役者コンビ(師弟)のお話だ。藤原が、馬の脚を演じることに強烈な矜持を持っている、という設定が喜劇を駆動する。
ゑぎ

 矜持の一端で、馬の研究も怠らない。農耕馬の、ひ腹の向こうに二人を映したカットなんかは、馬が完全無欠にフレームに収まっている、素晴らしいカットだ。あるいは、馬の脚のカットから素早くディルトアップして、藤原のバストショットに繋ぐ、というような楽しいこともやるし、クレーンを使った上昇移動の屋外ショットも2回あり、成瀬の自由闊達さがよく出ている。

 極めつけはラストの展開で、こんな状況で終わってしまうなんて信じられない!誰も予想できない常軌を逸したシュールなエンディング。もしかしたら、これもヤケクソだったのかも知れないが、これはこれで、決して尻切れトンボではないし、ある種の落ち着きの良さも伴った、奇跡的な演出ではないか。

(評価:★5)

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