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[コメント] 月給泥棒(1962/日)

ファーストカットは歩道の端を歩く男の足。続いて、ビルの外観をシネスコいっぱいにとらえたカットが来る。沢山の窓。この窓のカットを数カット、ポン寄りするのだ(以降、人物の3カットのポン寄りも何度か出て来る)。
ゑぎ

 このオープニングから、ラストのガレージの電灯点滅カッティング(セックスの隠喩)まで、岡本喜八らしい、凝りに凝ったカット割りの映画だが、その特質と、題材である現実離れした緩いコメディがマッチして、かなり面白い出来になっている。

 特に気に入ったのは、ヒロインの司葉子が勤めているクラブ(キャバレー)のシーン。主人公の宝田明が、最初に司と出会う場面の、早い展開とカッティングには唸った。このシーンの最後が、ダンスする2人の俯瞰になる。という視点転換も予想できないものだろう。また、司の同僚のホステスみちるは、柳川慶子だが、ほんのチョイ役かと思っていたら、彼女が中盤で尻振りダンスの見せ場があるのも嬉しかった。こういう小さな意外性で興味を引っ張っていくのが上手いのだ。あと、これも岡本喜八らしく沢山のおなじみの脇役が活躍する映画だが、中でも掃除のオバチャンの本間文子と、宝田の上司で無能な課長、宮口精二の扱いがいい。

 そして何といっても特筆すべきは、東南アジアの架空の国、ザバール国の購買担当を演じるジェリー伊藤の存在だ。本作は、彼と宝田のダブル主演と云ってしまいたくなるぐらいの活躍ぶり。いつもながらだが、ヘンな外国人によくなり切っている。日本は酒と女で商売する、と商習慣を批判するクセに、伊藤自身も、司葉子だけが目当ての商売をする、という潔い人物像も、映画としては美点だと思う。本作は、ジェリー伊藤の代表作と云うべきだろう。

#備忘でその他配役等を記述します。

・宝田の会社の社員。専務は十朱久雄。営業部長に中丸忠雄。人事部長・浜村純。同僚の平社員では砂塚秀夫二瓶正典(正也)が目立つ。専務秘書・若林映子。人事部長秘書は横山道代(砂塚が惚れいている)。電話交換手に原知佐子

・宝田の友人で、弱小広告代理店勤務の堺左千夫。ライバル会社の社長は富田仲次郎。同社員で林幹草川直也小川安三。ザバールからの要人の情報をもらすライバル会社の電話交換手は、森今日子

・惚れ薬をこっそり舐める旅館の仲居に塩沢とき。宝田が宮口精二と一杯飲む屋台のオヤジは沢村いき雄

・宝田の会社の病気療養中の社長は最後まで姿を現さない。

(評価:★4)

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