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[コメント] 親切なクムジャさん(2005/韓国)

「・・それより、ヒールある?」 ヒールを履いて臨戦態勢。
リア

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







監督は女ですか?って思ってしまう程、女心をよく分かってらっしゃる。ちなみに私はヒール7cm以下は無効力とし認めません。ヒールって不思議。女としての意識を奮い立たせる力を持ってる。たかがヒール、されどヒール。

彼女はなぜ復讐を企てたのか?

かつての恋人ペク(チェ・ミンシク) に愛娘を誘拐され、愛娘の命と引き換えに、少年を誘拐し殺した犯人になれと言う要求を呑み、濡れ衣を被り13年間も服役したクムジャさん(イ・ヨンエ) 。 天使のような微笑みの仮面に激情を秘め、天使のような親切さで人に接し…。

だが、 約束通り犯人になりきり服役し、出所したところで、非情薄情無情男ペクが約束通り愛娘を生かしてるとは限らない。 そんな危険な賭けをしてまでなぜ?復讐を企て貫いたのか…。

私なら、いてもたってもいられないはずだろうと思う。 ならば、一時は完全に犯人を演じ、1年後でも2年後でも判決が下りほとぼりがさめた頃、検事なり警察なり弁護士なりに話し、極秘に調査を進めてもらうなり、どうにかできなかったものだろうか?と思ってしまう。(そしたら犠牲者だってもっと減ったんじゃん!?) 判決が下った後はそう簡単にはいかないものなのだろうか?頼りにならず頼る事ができなかったのだろうか? とにもかくにも私なら、娘が心配で心配で復讐を企てるより、他に手を考えると思う。

それとも、娘はもうこの世には居ないだろう(約束は破られ殺され)と半ば諦めの復讐目論みだったのだろうか?娘は生きていると言う少ない希望に掛け、13年黙って服役したとも取れる。

ぼけっと観過ぎて、あーにもこーにも考えられるなーとか、分からないなーが多くて参る。。

高校生だったクムジャ(イ・ヨンエ) は、水族館からペク(チェ・ミンシク) に、彼との間に子供が出来て困ってる旨を伝え、「先生の所に行っても良い?彼は駄目、あてにならない。先生私をセクシーと言ったじゃない。」 と言っていたけれど、ジェニー(クォン・イェヨン) は、本当はペクとの子じゃないのか?クムジャはペクの事を、「子供が作れない体質」 と言っていたが、被害者遺族達から自分の娘を守る為に咄嗟についた嘘だったのではないか?

したら、いくら何でも自分の娘には手を下さないと思っていたのか…。 ペクがジェニーを自分の子と知っているかどーかも、本作を観る限りでは定かではないし…、 自分の子と知っていたから殺めず養子に出したのか、単に約束を守り殺めなかったのか…、 それともクムジャが言う事まんま真に受けてみて、ジェニーはどっか別の男との子だったかもしれないし…、などなど、疑問は尽きない。と言う訳で、もっかい観てみようと思う。

被害者遺族者達の描写もとても綿密に描かれていて、胸が苦しくなった。被害者が加害者に裁きを下す…是非が問われる問題を真っ向からぶつけられ、正直私はたじろいだ。被害者が加害者に裁きを下す事によって、被害者も加害者となり、初めて対等になる。 突如一方的に大切なモノを奪われ心を抉られ、泣き寝入りするのか?目には目を,歯には歯をとするのか?よく、復讐は何も生まないと言うけれど、この哀しみ,悔しさ,やり場のない思いをどうしてくれよう?と言うのも、想像ながら痛切に感じました。

復讐を練り、ただ復讐するわけではなく、「全てが美しく、完璧ではなくちゃ。」(だっけな?)と言ってピストルの細部にまで拘るところから、母親と引き裂くと言う事で純粋無垢な愛娘を巻き込んだ事、ペクのクムジャに対する仕打ちとの、両方に対する並々ならぬ憤りが伝わってきて、なかなか良いなと思いました。美しい私達を汚した償い(復讐)は、美しく!みたいな、単なると復讐とはせず高尚な復讐!とでも言いましょうか。

ひとつの物語、と言うよりは、社会性が強いと言うか一番考えさせられる内容ではありました。 が、ペクの顔した人面犬を銃で撃ち抜く夢を観るクムジャはちょっと悪趣味だなと感じたし、 復讐三部作の前2作(『復讐者に憐れみを』 と 『オールド・ボーイ』) に比べると、音響・音楽や雰囲気が劣ると感じたし、 前2作と違い、復讐の連鎖と言うよりはやられてやり返すと言ったカタチで、両者のガチンコバトルと言った風ではなく、作風が若干変わってしまったし(変わったのは良いんだケド、ちょっと残念っちゃー残念と言うか)、 残酷描写も割と直接的なものからやや間接的になっているにも関わらず、いちばん残酷に感じた感否めません。 と、前2作に比べると劣ると言いながらも、もう一度観たらまた違った見解が浮かびそうだし、考えてしまう=奥が深い内容と思い、★4 です。 (だったら前2作を繰り上げ ★5 にするって事もも考えましたが…保留です)

最後に、『復讐者に憐れみを』 の、シン・ハギュン , ソン・ガンホ ,『オールド・ボーイ』 の、ユ・ジテ , カン・ヘジョン , キム・ビョンオク , オ・ダルス , チェ・ミンシク が出演していて、前2作の出演者全員集合と言っても良い程勢揃い。この辺りからも復讐三部作集大成ぶりが窺えました。

'05.11@

(評価:★4)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)おーい粗茶[*]

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