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[コメント] 戦場のフォトグラファー ジェームズ・ナクトウェイの世界(2001/スイス)

 対象の魅力に頼り切った、平々凡々なドキュメンタリー。
にくじゃが

 ドキュメンタリーの醍醐味は、生の声を聞けるというだけではない。打てば響く生きた個体が相手なので、カメラのこちら側から語りかけることができる。(『ボウリング・フォー・コロンバイン』なんかはそれを過剰に売りにしてたな。)この映画にはその“語りかける”行為がない。ナクトウェイの個展に訪れたお客の質問に答えるシーンくらいしかない。喋らせるだけじゃダメなのだ。一般的な反対意見、なぜ嫌われるか、切り口はいくらでもある。カメラを回す側と回される側、そこに分かり合った緩やかな空気が流れるのでもいい、緊張感しかないのでもいい、何か両者の間に流れる空気が欲しい。この映画は撮った側に“自分”がない。しっかり自分を掴んで、その自分と相手との間にあるどうしようもない隔たりをどうするか? それが空気を生むはずなんだ。それがドキュメンタリーの魅力なんだ。ニュートラルじゃダメ。しっかり自分を持てって、ナクトウェイも言ってたよ。“自分”を確立した孤独なもの同士の真剣勝負。それが観たいんだ。

 この映画の冒頭に「いいものがとれないときは対象への近づきが足りないのだ」というキャパの言葉が引用されていたけれども、この映画も対象への近づきが足りないんじゃないかと思う。ジェームズ・ナクトウェイは、飛び込んだ真実の中、もみくちゃにされながらも、“自分”を持ち続け、“自分”の思うままに行動する。自分にできること、真実のために、贖いのために、写真を撮り続ける。この人個人はとても魅力のある人だろうとは思うけど、この映画はただのプロモーションムービーにすぎない。本編はまだまだこれからという感じ。

(評価:★3)

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