[コメント] 男たちの大和 YAMATO(2005/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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戦後60年という事で終戦の話がTVを中心に良く作られていたが、これが2005年最後の大作となった。
ちなみに監督の佐藤純彌はあの『北京原人 Who are you?』(1997)を作った人で、実はつい先日ビデオでこれを観てしまったため、本作の出来はかなり疑問。一体これどうなるんだろう?と言う思いを持って劇場に足を運ぶ。
観ている間、色々考えさせられた。観てる間圧倒されっぱなしで、観終わってから色々考えるのこそが良作という持論を持っているので、実はこれはあんまり良くないのだが、その間考えていたのは、佐藤純彌監督の使い方と言うことだった。
はっきり言って佐藤監督は人間の描き方が下手だ。特に叙情的なものとエロは相性が悪く、これらが入ると途端に変な作品になってしまう。つまり人間中心に、しかも優しい人間を描こうとさせてはいけない。ということ。『北京原人 Who are you?』が失敗したのは、要するに一番下手な作品をこの監督にやらせたことが敗因だったと言うことがよく分かった(こんなもん作らせたお陰で8年も干されてしまった訳だし)。
しかし逆にメカニカルなものと、中心を人間以外のものに持って行くなら、非常に優れたものを作ることが出来る。だからこそ『新幹線大爆破』(1975)という傑作をものにすることが出来た。
で、今回は監督の使い方は上手くはまった。何せ本作の中心は人間ではなく大和なのだ。勿論それを動かすのは人間なのだが、その人間描写を叙情的なものにすることなく描けるのはこの設定あってのこと。人間の生活臭をあくまで人生の一部として、淡々と描いていたお陰で中心点がずれることなく、大和という場所に収斂していってくれている。そう。佐藤監督の実力とは、ここにこそあったのだ。
ほぼ満員の映画館でほとんど鼻をすする音が聞こえなかった時点でこの映画は正解だったと思えた。
戦争が悲惨なのは当然だけど、それを叙情的に描くと説教臭くなって、面白味が無くなるけど、こういう風に淡々と描いてくれるとかえって見栄えがするというものだ(これがこれまでの邦画の悪さだったし)。
それと評価したいのは、巨大な船を動かすために重要な場所とはどこか。と言うことを曲がりなりにもしっかり描かれていたこと。水烹室を中心の一つにしてくれたのはこれまでにない描写だった。お陰で食事シーンが多く、こう言う所に偏愛の度合いが高い私としては、それだけで結構嬉しかったりする。強いて言えば機関室の描写が足りなかったのはちょっと残念。ここが一番物語として映える所なんだから(『宇宙戦艦ヤマト』(1977)で一番好きなのは徳川さんの機関室描写だったし)…ま、ここは金かかりすぎる割に見栄えがしないから仕方ないのかな。
海軍唱歌の「月月火水木金金」の一部が聴けたのもちょっと嬉しかったかも(笑)
ただ強いて言えば、時代考証及び人間描写があまりにも現代っぽいし、大和もどこを見ても汚れが全くないとか、問題はいくつもあるけど、CGに頼らずあくまでローテク特撮っぽく作られてるだけでも充分って感じ。だって東映特撮界では有名な人がスタッフロールで続々観られただけでも…(結局それかい)。
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