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[コメント] 愛してよ(2005/日)

さながら黄泉の国の入り口の如く、カメラが写し込んだ張りつめた冷たい空気を孕んだ新潟の光景は超絶的に美しい。ただその前に立つ子供を見て思うことは、バカ親のウソ八百に騙されてゆくいたいけな彼の未来についてだ。「僕」は誰の「下僕」であるのか。
水那岐

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「愛してよ」というタイトルが子供の台詞と設定されていることが判ったあたりから、その偽善的なカラーに慄然とする。

父親だけではなく、母親も保護者失格である。子供を使って虚栄心を満足させようとしているだけの幼稚な女だ。だが、多分この福岡芳穂監督が女性であることから、何故かこの母親のほうに分があるように描かれている。この女に、自分のデザインした服を目を輝かせて着せるデザイナーの純心など金輪際判るまい。

自殺しようとした息子に吐いた台詞が傑作だ。「こんなにもあんたを愛しているあたしの前で、自殺できるもんならやってみなさいよ」だと。ケッ、反吐が出るとはこのことだ。おまえに息子の心の百分の一でも判っているというのか?その上でよく「愛してる」なんて言えたもんだ。

愛情ではなく惰性で母親を選んでしまった息子は、いずれあの冷たい目をしたトップモデル少年のように冷酷なナルシシストに育つのかもしれない。

カメラにプラス1点。

(評価:★2)

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