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[コメント] 天国と地獄(1963/日)

自己犠牲?善意?いや、不条理!
オノエル

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







わからない。ありえない。なぜ主人公は他人の身代金を払ったのか?その金はただの金ではなく「会社をつぶして他人の身代金を払う」ということだ。自己犠牲?善意?まさか。こんな不条理は映画でも滅多にありえない。しかし逆説的に、この映画の価値は不条理という点に集中している。

だれかが(世間が)主人公に「他人を救うために、自分を破滅させろ」と命じた。これが、この映画についてわたしが理解できる限界だ。

主人公三船敏郎は偽善者らしく見えるがなにしろ三船敏郎なので、そのような高尚な内面はありえない(※かれ自身が、ではなくかれという役者の持ち味からして)。主人公はなんとなくこれが常識というものか、と感じ、しぶしぶ自分を破滅させる。

むしろ、偽善としての生け贄を要求する人たちがいるのだ。その象徴が、主人公の妻香川京子である。顔の見えない、得体の知れない圧力。もちろんそれは一見わかりにくく、掛け値なしの笑顔で、なにより無垢なのだ。

けっきょく、圧しつぶされた男二人が対峙するのがラストシーンということになる。まったく不条理だ。

(評価:★2)

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