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[コメント] 夜と霧(1955/仏)

全人類必見の作品だが、21世紀の今観ればある意味『エルミタージュ幻想』にも思える。
ペペロンチーノ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







この映画が1957年、終戦からわずか十余年後に制作されたことに意義があると思う。 これが世界で最初かどうかは知らないが、かなり早期に収容所の実態を世界に知らしめた作品だろう。 そして、この記憶を風化させまいという意図が明確に提示されている。 未来永劫同じ過ちを繰り返さぬために、全ての人がこの悲しい記憶を心に刻むべきだと思う。

しかし、戦後50年以上経て初めてこの作品を観た私個人にとっては、残念ながら既に見知った映像ばかりだった。

冒頭の「一糸乱れぬナチス」の描写は、つい先日観た『意志の勝利』の映像だし、当時の収容所の模様はNHKスペシャル「映像の世紀」で毎週死ぬほど号泣しながら観たものばかり。いやもちろん「映像の世紀」の方が後なんだけどね。 加古隆「パリは燃えているか」の旋律に載せて流れる衝撃的な映像に、二度書くけど、死ぬほど号泣した。憐憫とかじゃないんだよね。なんだろう?あまりの衝撃に泣いたんだよ。目に焼き付いて離れない映像ってこういうことなんだと思う。

しかし、ここまで書いてきたことは映画評じゃない。事実に関する感想だ。

この作品、ドキュメンタリーなのだが、どちらかと言うと詩、あるいは「兵どもが夢の跡」的な俳句にも思える。 収容所跡を訪れ、そこでの出来事に想いを馳せる。後にソクーロフがやった『エルミタージュ幻想』に似ている。 ただ、余計な言葉よりも映像が説得力を持っているという意味では、ものすごく映画的だと思う。

(09.12.29 渋谷シネマヴェーラにて鑑賞)

(評価:★3)

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