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[コメント] クラッシュ(2005/米=独)

「衝突(クラッシュ)」を描いた映画だけに、人と人との衝突、すなわち口論のシーンの出来栄えがどれも素晴らしい。
緑雨

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







銃砲店の店主とペルシャ人家族との口論、警察官マット・ディロンと病院の電話オペレーターとの口論、鍵屋とペルシャ人店主のドアを交換しろできないの口論、TVディレクター夫婦の不信感を露わにする口論…無数に散りばめられた口論の緊迫感と壮絶さ。互いの人格をストレートに剥き出しにして切り合い傷つけ合う。感情の昂ぶり。こういった妥協なきぶつかり合いの演出がベースにあるからこそ、作品全体に見応えと説得力が生まれる。

それにしても、ペルシャ人の商店主が逆上して鍵屋を撃ちにいく場面での”透明マント”の伏線回収には思わず声を上げて唸ってしまった。映画を観ていて素晴らしい演出に唸らされることは多々あるが、このように純粋に脚本に唸らされることはめったにないこと。また、TVディレクターテレンス・ハワード(いい役者だ!)がライアン・フィリップ演じる若い警官の理性的な説得にも感情をコントロールできなくなる下りなんかも、それまでの妻や警官との出来事がよく効いている。フィリップがディロンとのペア解消を訴えるシーンでの黒人上司の応対なんかも、非常によく設計されたダイアログだ。

決して脚本だけの映画ではないのは承知するが、こう巧さを見せつけられると、これが「脚本家が撮った映画」であることがつい頭をもたげてしまう。終盤たくさんのエピソードの輪が都合よくつながりすぎるあたり、やや「脚本過剰」の印象を受けてしまったり。

ラストの大団円はちょっと優しすぎるかな、という気もしないでもないのだけど、誰の上にも等しく雪は降る、みたいな余韻も悪くない。

(評価:★4)

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