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[コメント] PROMISE 無極(2005/香港=中国=韓国=日)

自由な視点の移動とフォトリアルな映像の道具とされてきたVFX映像の使用には、かつて禁じ手があったが、21世紀映画はどんどん禁じ手を解き始めた。この映画はその意味では時代の先端を行く。もちろん、出来栄えとは全く別の話だ。
ジェリー

フォトリアルでなくとも大時代なストーリー映画に使用する遊戯感覚、ワイヤアクションとの共同による荒唐無稽さの強調。かつて、写真のような絵を目指した西洋絵画が20世紀を迎えて絵のような絵を目指し始めた1世紀前の時代の流れと、昨今の映画史の動きはとてもパラレルに見える。

制作体制についても、アジアによるアジアの総合力を生かした映画が作られ始めている。この映画の俳優陣やスタッフのの国籍の多様さを見ると、これからの映画の将来性にまだまだ未知の領域があることを感じさせる。

しかし、そうした制作態度には可能性を感じつつも、テーマの保守性は否定しようもない。女一人のために国家の屋台骨を破壊してまでも争いあう男同士の激突をテーマにした中国映画の痴呆性にはもう飽き飽きしつつある。実録に則った映画ならまだしも、神話的なフィクションの映画でそのテーマを展開する必要はない。今なぜに巨匠チェン・カイコーがこのテーマを採り上げたのか正直よく分からない。

VFXの質も、ポイントの抑え方が悪く、雑に過ぎる。他のコメンテータの批評を見ても、失笑を買っているところがいくつかあることがわかる。雑味を取り入れることが映画の狙いではないはずだ。

同じようなシーンを何度も細切れにカットして重ねていく映像がところどころにある。これとてもう50年も前にゴダールが導入した表現形式。目障りさを逆手に取った斬新さが当時はあったはずだが、今更事新しげに使うなよという気がする。

とにかくチェン・カイコーにはジョン・ウー化して欲しくない。金にはならないかもしれないけれど。

(評価:★3)

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