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[コメント] エノケンの猿飛佐助(総集編)(1937/日)

前ふりのサラリーマン哀歌がその後どう活かされるのか。ずっとわからず悩んでいたら、ちゃんとオチでつながりにっこり。凝った音楽の使い方(仰げば尊しとか笑う)といい特撮天国っぷりといい、嘉次郎テイストも色濃いかも。実際は脚本のみのようだけど。
tredair

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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最初はスパイ目的で近づいたはずの敵方のお姫様がだんだん佐助(エノケン)に惚れてしまい、いつしかロミオとジュリエット状態に! みたいな展開にはけっこうドキドキさせられた。

「いきなりガマガエルになっちゃったりしてオレって気味悪くね?」「全然ー。そんなあなただからこそ好きなんだってば(はーと)」みたいな甘酸っぱいシーンには、その直前の悲しいシーン(毎日のようにラブレターを送っている意中の少女が「忍者なんて気味悪い」と他のイケメンに話しているところを立ち聞きしてしまうシーン)を知っているゆえ、思わず顔がほころんでしまう。

ああ、よかったね。とうとう素敵な人が見つかってよかったねと、心から祝福したくなる。

また、だからこそ、彼女が自分の身分を打ち明けた後の<駆け落ちを前にしたおしゃもじ取り上げのくだり>では「え、その真意は? あの恋の告白はやっぱり嘘だったの?」などと心底やきもき。

これは彼女の当初の思惑もふたりの現状も知っているのは観客のみである、といった設定(エノケンが彼女の最初の目的を知らないのはもちろん、彼女側の家臣等も彼女が現在エノケンとこっそりデートを重ねる仲になっているということを知らない)を考えると、かなり効果的だ。てゆーか巧みな脚本だ。と思う。

ともあれ、後日談がちゃんと語られているところも含め、忍者ものでありつつ恋物語でもあるところが洒落てて粋だなぁと思った。

随所に挿入される百面相ギャグもエノケンの表情の豊かさを堪能できステキだし、桃の花が咲き乱れるセットも美しいし、ときおり挿入される凝ったカメラワークなど仰天もののかっこよさだし。ああ、完全版がどこかに残っていればよいのになぁ。

(評価:★4)

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