[コメント] 変態村(2004/ベルギー=仏=ルクセンブルク)
映画を見終った人むけのレビューです。
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タイトル『変態村』。
どんな「変態」映画かと期待したが、何ということもなく、単なるホラー映画。しかもスプラッターでも何でもなく、ちゃんと「愛の<不在>」という物語が用意してあるのだ。タイトルで(それから宣伝で)どれだけ損しているだろうかと考えると、少し泣けてくる。まぁタイトル通り「変態」なシーンは、あると言えばある(獣姦で輪姦、男が男に強姦(輪姦?)、女装させての強姦)のだけど、それを以って「変態村」と呼ぶには、少々パンチが弱すぎる。結局、宣伝に騙されちゃったわけだ、俺。
唯一、本当に「変態だ」と思えたのは、酒場でピアノに合わせてピョンピョン跳ねるだけのダンスを踊っている村人たちの描写。別に怖いとは思わなかったけども、確かにあれは「変態」っぽかった。でも、それってこの作品の描きたいところじゃないから、やっぱり『変態村』ってタイトルは関係ないのだ。
あと、フィリップ・ナオンがカッコイイ。この人の目つきはヤバイね。この人、立ってるだけで「変態」っぽい。それは勿論『カルネ』『カノン』『アレックス』の時の印象が強いからでもあるのだけども。
それからあの晩餐のシーン。拾ってきた牛。女装させられた主人公。ゲラゲラ笑う家の主人。目のアップ。ぐるぐる回るカメラ。どうみても『悪魔のいけにえ』の露骨なパクりでしょう。興醒め。
◇
「愛の<不在>」の物語としても、今ひとつ説明不足の感が否めない。これをホラーとして描くなら、もっともっと変質狂的な「愛」の物語にも仕上げられたはずなのだが、思いのほか監督はストレートに描きたかった様子で、あくまで物語をストレートに描く。
それによって分かり易さこそ増すものの、どうも「異常性」が欠けてきて、「ただの過去に取り付けれた人たち」にしか見えなくなってしまう。それが非常にもったいない。あくまで「異常」として扱うなら「異常」として描けばいいのだ。敢えてそれを避けて、ただの「愛の<不在>」の物語にしてしまった意図が、今ひとつわからないのだ。
余計な説明よりも、ホラーを追求すればよかったと思うのだけどもなぁ・・・何かもったいない。
牛の鳴き声とか、中盤、家の主人が主人公を縛って女装させる件とか、そういう辺りは、非常に面白いと思うのだけど、何か根本的な部分で(でもやっぱりタイトルで)失敗している気がしてならない。惜しい。
「変態」を描くか、「愛の<不在>」を描くか。「愛の<不在>」の物語を突き詰めて描くのであれば、相応の方法があったはずだ。あくまで「変態」としてやるならば、もっともっと「変態」を描かないとさ。やっぱり。
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