何とも言えない辛さは、最初から非業の死を予告されている「嫌われ松子」故に已むを得ないのかと思いつつパンフレットに目を通すと、そこには如何に撮影現場で中島監督が中谷美紀を追いつめ、彼女が追いつめられ、それを周りのスタッフが見つめていたかが描かれていた。通常のパンフよりかなり多くの役者・スタッフの言葉を収めているのだが、特に印象的だったのが柄本 明の言葉だ。「よく憶えてない」を連呼する彼は明らかに他の役者のコメントよりテンションが低かったが、憶えてないという割に<撮影中、中谷に何か言ったらしいが？>という質問に「監督に何か(無理なこと)言われたら台本投げつけて逃げていきなよ」と言ったのだとそこははっきりコメントした。無論、撮影で鬼になり作品を生み出すタイプもいる事は想像できるが、あのパッと見エンターテイメントしてる作品が役者の神経を極限にまでスリ減らして作られていたと聞くと、なるほどその辺にも原因があるのかな、と思う。

中島監督ではないが、堤幸彦監督に於ける柴田純(中谷美紀)と山田奈緒子(仲間由紀恵)のキャラの差異が飲み込めた気がする。恐らく堤監督が設定した時点では両者はかなり似ていたのではないだろうか。中谷と仲間の差異が作品を大きく分けたと思う。

それとぼくは柴咲コウが登場した当初中谷との区別がつかなかった。今回競演していると知り、松子の若い頃を演じるのかと期待したが全く違う役だった。しかしそれによって柴咲と中谷の違いもよく飲み込めたのであった。