[コメント] 悪の紋章(1964/日)
しくじったときの橋本忍らしいトンデモ映画で、ともかく矢吹寿子の精薄者の造形がひどい。当時の観客がなぜ不愉快にならなかったのか不思議。この時代らしい軽薄な人権意識ということか。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
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あの黒い歯はどうだ。あんなもの映して何が愉しいのだろう。彼女を悪役にして、しかもそれが新珠三千代の偽証ときている。それなら映すなよ。これではどうしようもない。
山崎と新珠のふたつの復讐がひとつに重なり、山崎が代行するという物語は、上手くすればいいものになっただろうが、最後に佐田啓二が首括っても特にカタルシスはない。秋吉台の大量の穴ぼこを見て、遺体はこのうちのどれかにあると山崎が直観する件(しかも発見してしまう)から映画はトンデモ映画に大きく舵を切り、もう止められなかった。全てが嘘のように繋がる終盤は本来、推理劇の快感が伴うはずだが、代わりにまあどうでもいいやと投げやりな気分が喚起される。
映画は頑張っており、冒頭の河流れる女の遺体とか、復帰した山崎を見るカウンターの驚き顔の羅列とか、スリの件とか、人差し指と中指の間に鉛筆挟む安部徹への突然の拷問とか、いい描写があった。夜の港の貨物列車を茫然と見送る後ろ姿の新珠が私的ベストショット。しかし矢吹で帳消しだ。
あと、終電でふたりが残っていると係員が掃除し始めるのだが、このときの大量のゴミがとてもリアルだった。昔は車内で出たゴミは全部床に捨てたんだとよく判った。精薄者を軽薄に扱うのとパラレルな事実ということで、当時の社会心理学的なサンプルとしては価値高い作品だろう。
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