最近妙に増えてきた難病ものの作品だが、実はこの手の作品は私はどうにも合わない所があって、良い作品とは思う一方、なにかはまりこめないものを感じてしまう。本作も物語自体はフォーマットに則っているのだが、主人公に働き盛りの男を配する事によって、この世代の人間にとっては内容がとても切実になっている事が挙げられようか。本作の巧さは「もし自分が？」と思った瞬間、自分の周りを見渡してしまう。それで「ああ良かった」と思える人ってそうはいないんじゃないかな？私が難病ものが苦手ってのは、強引に感情移入させられるのが駄目なのだが、本作はするっと入り込めた。

　主人公の勤めているのが広告代理店ってのも良いよね。かつてやりがいのある仕事ナンバー・ワンだった広告代理店も、これを観る限りは、単なる消耗を強いる職業にしか見えない。そう言う意味で物語そのものはともかく設定は好みの作品。

　渡辺謙は流石に貫禄の演技だが、それを甲斐甲斐しく支える樋口可南子も良い。単なる「好き」だから支えるのではない。リアリティある夫婦の関係として支えている姿が良い。