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[コメント] 淑女は何を忘れたか(1937/日)

物語は良いんですけど、コメディをコメディとして観られないのが残念。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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 小津監督出征前の最後の作品で、この作品を撮り終え、小津監督は陸軍伍長として召集された。

 この時代の邦画は残念ながら良質な作品がない…語弊があるな。作品単体としては素晴らしいものが結構あるのだが、監督の技量がいくら高くても、画質と音質がそれに見合わないため、現在で観ると、それを解釈するだけで疲れてしまう。本作のような軽快なコメディも、集中して観ないと何を言っているのかよく分からないという問題があり、素直に楽しめなかった。特に戦前の小津作品は軽快な作品が多いだけに、それを素直に楽しめなくしてしまった日本の映画界も問題がある。

 それに、なんか妙にキャラクタの演技が硬いのも気になる。小津流の微妙な演技を強いられ、それに慣れてなかったためだろうか?活き活きするか、押さえ込むか、その微妙なところを少々外したように見えた(画質が悪いだけだろうか?)。

 ただ、本作は小津監督にとっても大変重要な転機を与えたのではないかとは思う。一貫して国策映画を撮ることを拒否した小津監督は、自分の取りたい作品も撮れなかったため、コメディに活路を見いだしてきたのだと思うのだが、スラップスティックコメディではなく、日常の何気ない仕草の中にコメディ的要素を組み込めることを本作で確信したのではないかと思う。戦後に作った作品は、コメディタッチよりはペーソスの比率が高くなっているが、それでも、小津監督が今も大きな評価を得ているのは、その中に暖かな笑いが込められているからなのだろう。ある意味、本作が以降の小津監督のベースとなっていると思われる。

 小津監督とは名コンビと言われたカメラマン茂原英雄とのコンビ開始作でもある。

(評価:★3)

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