[コメント] 長屋紳士録(1947/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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監督の5年ぶりにして戦後第1作となった作品。5年というブランクを考えるに、戦争というのは大変大きな影響をもたらしたことを感じさせる出来になった。
戦前の監督作品はモダンで皮肉に溢れた作りが売りだった。どんな作品を作っても、笑いを忘れないというか、基本はコメディという姿勢を貫いたものだ。
しかし、出兵した小津は大変な経験をしたらしく、戦後はがらりと作風を変えた。
作品はコメディよりも何か別なものを強く主張するようになる。それは日本的な風景であったり、親しい仲にあっての感情のすれ違いであったり。心に関する大変微妙なものになっていく。
本作はまだその作風を確立していないが、その過程にあるような話で、コミカルさよりもしっとりとした人間関係が主軸となっていて、確かに小津監督特有のタッチへと向かいつつある事を感じさせてくれるものだ。
多少演出不足も感じるが、当時戦後の公開ラッシュに合わせたために致し方ないところか。
ここに描かれるのは既にある家族をどうするかではなくて、反発しながら家族になる過程を描いているのが特徴だろう。貧乏暮らしの中で、家族が無いというだけの理由で子ども押しつけられ、面倒くさいだけだった世話がやがて楽しくなっていき、それが生き甲斐になっていく過程がしっかり描かれていく。実はこれが私には見事にツボにはまった演出で、こんなの見せられてしまうと悪い点数を付ける気になれなくなる。
そこで唐突におこるペーソス溢れるラストシーンはちょっと胸に来る。個人的にはここは幸せになって欲しかったか、もう少ししんみりさせて欲しかったところもある。この出来なら復帰作としては充分だろう。
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