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[コメント] 黄金の雨(1936/米)

冒頭近く、ビング・クロスビー−ラリーが遊園地の中で14歳のエディス・フェロウズ−パッツィに会い、アクどい輪投げ屋台のオヤジからオペラグラスをせしめる。
ゑぎ

 その後、2人一緒に歩くシーンで、まずパッツィは自分の足元をオペラグラスで見、次にラリーの顔を見る。こゝでクロスビーの仰角アップが挿入されるのだが、この感覚に痺れる。そしてこの後すぐ、2人ともお金がない、という話になって、唐突に空の雲のショットが挿入され、クロスビーがギター(リュート)を弾きながら建物の中庭で唄うシーンになる。すると、住人からコインが投げられる。つまり、本作のタイトル(英題は「ぺニーズ・フロム・ヘヴン」)が体現されるのだ。

 あるいは、パッツィのお祖父さん−ドナルド・ミークの登場ショットが、路上でチェス盤の前に座る彼を映してトラックバックするショットで、そのワンカット中に、右から左へ画面を馬車が横切るというキャッチーなものだ。これに対になるように、中盤のルイ・アームストロングの歌唱シーンが、彼から長い(かなり引く)トラックバックで表現され、店内全体を見せる、というものであるのもいい。ちなみに、この「スケルトン・イン・ザ・クローゼット」というミュージカルシーンは、いろいろ工夫を凝らして店内の幽霊趣味を上手く見せる。

 というように、本作の前半はとても良い出来だと思う。これが後半になって、幽霊屋敷のレストラン(クラブ)が放擲され、パッツィがラリー−クロスビーやお祖父さんから分離されて施設に強制収容されるといったかたちで前半のプロットが解体されていき、かなり散漫な構成に変じた感覚を持つ。また、福祉局のソーシャル・ワーカー−マッジ・エヴァンスとクロスビーとの恋愛譚も、ハリウッド映画で主人公の恋愛に納得性を求めるなんて野暮なことだと思いながらも、やっぱり、とってつけたようにしか見えない。それは、素直にエヴァンスに魅力を感じないからだと私は認識する。そんなこんなで、本作のヒロインは、私にとってはパッツィを演じるエディス・フェロウズだ。彼女もちょっと癖のある個性だが、それでもエヴァンスよりは何倍も魅力的だ。彼女が泣きながら、クロスビー に「愛してしまったの」と告げる場面に感動する。

#備忘でその他の配役などを記述します。

・サッチモに「鶏泥棒!」と叫ぶ農夫は『怒りの葡萄』のフランク・ダリエン

・遊園地で「死のコースター」を主宰する男はトミー・デューガン

・孤児施設の代表の女性にナナ・ブライアント

・ホテルで地図にピン止めするクロスビーに質問するニディア・ウェストマン

・サッチモのバンドのドラム・プレイヤーは、ライオネル・ハンプトンらしい(仮面で顔が分からない)。

(評価:★3)

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