[コメント] 麦秋(1951/日)
持っていたことはないけれど、失ったことはよくわかる
日々日々を折り目正しく生きてゆくことで生まれる幸せ、と口では言っても、もう21世紀の僕らは、たぶん誰ひとり、全然知らないのだ。それがどんなものなのか。どれだけ豊かで大きな幸福なのか。
それは、日々日々を折り目正しく生きてゆくことで生まれる幸せがこの映画に定着されているからだ。こんなにも大きく豊かな幸福を、僕らはおそらくいちども知らない、という思いに愕然とする。
しかしそれはまだしも、僕らの小さな幸せなのだろう。 失ったということを、知る。 映画の魔術がこれらを定着させたから、知ることができた。 映画の魔術が、もしそのはたらきを見せなければ、永遠の闇に彼らの大きな幸福は失われ、それはまさしく真に失われ、はじめから存在しなかったかのように失われたことだろう。
この映画はまさに僕らのささやかに小さな幸福だ。
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