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[コメント] 秘技 十八武芸拳法(1982/香港)

 まやかしを破ること、人をいたわること、国を憂えること。この作品にはラウ・カーリョン的要素のさらなる進化、武術に対する諦念が滲む。
にくじゃが

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 惜しいところはいろいろ。フー・シェンが出てくるところ、彼の魅力が強すぎて映画全体から見るとやけに浮いてる。再登場させるつもりがないなら、もっと雑魚っぽい人にやらせた方がよかったんじゃないか。ラストバトルの前、お尋ね者の雷公さんが雷勇さんに言うセリフ。長すぎ。解説してくれなくていいよ。早く二人の戦い見たいんだから。

 清朝末期、義和団結成。神打・茅山・術、まやかしに執着し、無敵の軍隊を信じ続けた清朝はヨーロッパ列強、そして日本の侵略を許す。中国人が中国的なものを追い続けた結果がこれなのか。ツイ・ハークの『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地大乱』でジョン・チャン演じる陸は言う。もうおわりだ、これが中国人の姿か、と。

 ラウ・カーリョン監督はデビュー作である『マジッククンフー 神打拳』、『少林虎鶴拳』、『霊幻少林拳』に続き本作でも、そんなものはうそっぱちだ!と宣言する。本作で監督自身が演じる雷公はまやかしを捨て、中国古来の十八種の武器を使い、そいつらに勝利する。つまりまやかしはあくまでまやかしであって、中国的な武術ではないと。十八種の武器全てを使って展開されるラストバトルには文句なし。しかし、本作はまやかしを晴らすに留まらない。

 雷公は各まやかしチームのリーダーに非まやかしで勝利するが、とどめは刺さない。彼はラストバトルに勝利しても、義和団を再結成するでもなく、またどこかへ消えていく。武芸十八般は生かされない。きっと分かって欲しいのだ。確かにまやかしは武芸十八般に勝てないが、それがなんだというのか。武林の権力争いなんて無駄なものだ。武芸十八般も真に国を守るものにはなれない。

 この映画の制作は1982年。この年、ジャッキーは80年『ヤング・マスター』での脱カンフー宣言後第一弾『ドラゴン・ロード』を発表し、サム・ホイは現代アクションエースシリーズ第一弾『悪漢探偵』を出す。まやかしのむこう、現実。少林英雄の暗黒の時代がやってきたのだ。

(評価:★4)

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