コメンテータ
ランキング
HELP

[コメント] インサイド・マン(2006/米)

退屈するヒマのない硬派エンタテインメント! クライブ・オーウェン演じる知的な強盗犯の設定がよく練られていて、それによって緊迫感が増していた。演技的にも、彼のインパクトに冒頭から引き込まれた。(2007.01.22.)
Keita

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







まずは脚本が面白かった。推理小説のような緊迫感を放つ脚本で、映画としての見せ方もきっちり考えられた脚本。冒頭のクライブ・オーウェンによる銀行強盗の語りから、台詞の魅力と今後の展開への期待感をあおる。端から、ストーリーの面白さに期待が持てた。

舞台がニューヨークで、監督がスパイク・リーだと聞くと、こういったサスペンス・アクションは想像できなかったのだが、エンタテインメントとしてしっかりとまとめ上げるあたり、監督が映画をわかっている証拠だと思う。テンポの良さ、登場人物の生かし方、凝った構成…。ただの娯楽映画以上のものに仕上げているのだから。

キャラクターも魅力的である。特に銀行強盗の主犯を演じたクライブ・オーウェン。冒頭から只者ではない雰囲気を漂わせ、覆面をつけていても存在感をアピールしていた。知的犯罪者として、声に魅力があったと言える。突き詰めると、その声の特徴で、逮捕されてしまうのではないかと思えるほどだった。

僕にとっては、完全犯罪を成し遂げる彼こそが主役だった。人を殺さないで完全犯罪を成し遂げるという難題を、先の先を読みつつ成功させる知能犯ぶり。あのダイヤの指輪を盗めば、必ず権力によって買い戻されることを読み、それによって銀行から金を盗まずに大金を入手でき、かつ極秘事項が絡むため、絶対にこの犯罪で捕まることはあり得ないというところまで計算に入れた。その上で、金銭的な利益は減らしても、権力者を陥れるというずる賢さを急遽働かせ、完全犯罪の成功だけでなく、他人を陥れるという優越感を感じる行いまでやってのけた。見事としかいう他がない。人物設定、役者ともに、かなり引き込む力があった。

加えて、ジョディ・フォスター演じる弁護士も、実は存在感があった。結婚できなさそうな嫌な女だが、とにかくキレる。最終的には当然のように自らの利益をさらっていく。最初はあまり意味のない役に思えたが、かなりスパイスの効いた役柄であった。

上記のふたりの会話が一度だけ存在するが、ここでは知的なもの同士の会話として、話されている以上のことが彼らの頭の中では動いている。それを推測する楽しみがあり、このふたりの知的なキャラクターがいたからこそ、少し疑問が残る結末を、より追求して考えることができ、自分の中で映画を深めることができた。

これは、エンタテインメントとして、かなり高水準な映画である。

(評価:★4)

投票

このコメントを気に入った人達 (0 人)投票はまだありません

コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。