[コメント] お早よう(1959/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
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まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
時は1959年です。
この映画にも出てきますが、相撲のシーンをテレビでやっているのが時代を彷彿とさせますね。初代若乃花全盛の頃でしょうか。
小津安二郎監督の作品は、ここまでかなり暗いメッセージが込められていましたが、この作品は彼のカラー2作目で、むしろ初期の小津作品を思わせる明るさが見て取れますね。
小津作品は子供が出てくると、グッと明るくなります。
この映画の主役も、錚々たる名優の皆さんよりも、子供の演技、特に小さい小学生の演技に注目です。好演していますね。
おならの音と音楽を見事にミックスさせてリズミカルに進むお話も、とても楽しい。本来の小津作品に回帰するような面白さですね。
お話は小さな住宅街に広がる色々な行き違い、ボタンの掛け違いのようなエピソードが積み重なって、そこに住む様々な家庭を映し出します。
タイトルの『お早よう』の意味が子供にとっての考えと大人の立場によって微妙に行き違いが生じて、ドラマを面白くしていますね。
佐田啓二が「無駄とおもっても、やっぱり必要なものなんだ」というセリフに、日本人が失いつつある何気ない礼節を必要なものとして説明しています。
最近は会社に行っても、近所の人とすれ違っても挨拶しない方が多いようですが、やっぱり人と人とはどこかでつながっていないと、社会風俗が乱れてゆくような気がします。
この映画で子供がやたらと我儘を言うシーンにドキッとしますが、子供のこの「甘え」のようなものも失われつつあるように思います。子供が必死になって親にせがむ行為と、しつけの家庭で駆け引きが行われる関係というのが、今はない。子供がほしがるものはすべて与えられて飽食な世の中になってしまったようですね。
そんな時代背景を現代と比較してみるのも楽しいですね。
2010/03/28 自宅
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