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[コメント] ステイ(2005/米)

スタイリッシュな映像&シュールな展開にド肝を抜かれはするものの、人物に注がれた視線はいちいち暖かいし、構築された独特の世界はどこか懐かしく、最後には癒される。
カズヒコ

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

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絵も音もかなりイケてるという印象の強いマーク・フォースター作品。『チョコレート』では、ときおりアンニュイな音楽とともに挿入される浮遊感のあるロングショットに惚れさせられたものだが、彼の最大の特徴は、むしろ、人間ドラマのほうにあるのだとおもう。

人間描写に特徴があり、人の持つ暗部を容赦なく写し取る残酷さを備えながらも、それを打ち消すにたる慈悲を感じさせてくれるのだ。『チョコレート』は、死刑、あるいはレイシズムという悲惨な現実をなんとか克服する姿が見物だった。脚本家でいえば、野島伸司のような悲劇の名演出家というイメージ。そして、今回も痛ましくも美しいドラマが描かれていたとおもう。

展開や映像は、デヴィット・リンチの『マルホランド・ドライブ』や『インランド・エンパイヤ』を思わせるナイトメア系(?)とでもいえるのだろうか。つじつまの合わない世界が超現実的にえがかれ、一種、前衛的な雰囲気のただようものとなっている。

でも、リンチと決定的に異なっているのは、登場人物の扱いだとおもう。なぜか、みんなが例外なく優しいのだ。それは、一つ一つの台詞にも表れている。決して病者というものを差別することはないし、逆に、変に気を遣ったりすることもない。言うことはずばずばいうし、これぞ理想的とおもえる対応がなされているので、ちょっと恐れ入ってしまうくらいだ。ここまで、アットホームな雰囲気って実はなかなか味わえないと思う。

そして、最後に明かされる交通事故という真相。それまで描かれていた世界は、死にゆくものが観たつかの間の夢なのか、それとも、彼は植物状態で今も生きているのだろうか。

いずれにしても、表面的な死や病のイメージとは裏腹に、メタファーとしての人間愛に満ちた不思議な作品になっているとおもう。マーク・フォースターの監督としての特徴もよく表れているのではないだろうか。

チョコレート』のときも目立っていたash&spencerの音楽は、今回も秀逸。

(評価:★4)

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