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[コメント] 虞美人草(1935/日)

制限時間短く演出も淡泊、満足できる出来ではないが、クライマックスは見事な熱量で、後年の粘着力を予感させてしみじみと美しい。撮影は鮮やか、何度もはっとさせられる。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「藤尾みたいに楽しみの多い女は危ない」。女から見れば男もそうだろう。一面古い倫理観だが今だって通用する教訓という側面もある。せめてもう30分あれば男性三人を深掘りしていいものになっただろうに惜しい。

岩田祐吉大倉千代子が共に泣く件はとてもいい。男に捨てられたからと(母ならともなく)父と娘が一緒に泣くなんて、いいクライマックスだ。ここが良かったので1点加点。他は全部お座なりだが、制限時間のため、ここさえ充実すればいいとミゾグチは考えたに違いなく、その狙いは命中している。

大倉が夜道で写真館を覗く件、少しづつ表情に陰影がこもる月田一郎、彼を岩田が見送る際のランプの美しさ、どれも素晴らしい。そして件のクライマックスの構図の才、特に切り返しがすごい。和室を撮らせてミゾグチの右に出る者はいない。

(評価:★4)

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