[コメント] 雷撃隊出動(1944/日)
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舞台はフィリピンのどこかの島(終盤に比島への無電がある)。本戦闘にて決定的打撃を与えるに至らずの艦内放送。空母から島の佐藤大河内伝次郎部隊へ飛ぶ村上河野秋武と川上森雅之は三上藤田進と再会。三人は名の通った飛行機乗り。夜は三人でランプの灯る森際のテラスで酒呑んでいる。お前のために酒持ってきたんだ、船でも今は配給だと云っている。口髭の河野は酒が不味い、優秀な連中をたくさん殺して、それを思うと酒など呑めんと不機嫌。森は航空機補充のため日本へ。母艦の空母も島に来て逗留。燃料不足なのだからそれなら河野らも船でくればいいのにと思う。兵隊は河野の指導で夜間に野戦攻撃訓練。
ヤシの実繁る現地の教会に島民が集い、讃美歌が聞こえてくる。主計長三島雅夫は島民の歌好きを利用した米英の攻略と論評、彼の案内でふたりは広くて清潔なやまと軒で汁粉。最後の砂糖使ったと語る経営者の東山千栄子はここの土になれば本望、アメリカの畜生ども二三人叩き切ってから死ぬと意気込む。夜は部下に訓練させて大河内らはトランプ。上官ってのはこういうものだろう。兵隊たちは休み時間に野球しているが敵性なのによかったのだろうか。
鐘が鳴って大型爆撃機襲来、ゼロ戦出撃、防空壕で大勢が待機中に再会があり冗談云い合い、詩人の三島は雅楽の劇伴バックに、日本で優れた詩が生まれた時代は戦争の時代、雷撃精神だ、即ち死ぬことなんだと訴えている。爆弾の音と250キロが落ちたななどという戦評。翌朝、飛行機が黒煙を上げており、大河内は碁打ちながらだいぶやられたようだねえと気のない風に云い、飛行機のない兵隊は待機を残念がる。夜の露店で慰問映写会「故郷だより」。炭坑節の踊りに兵隊が母親を発見したときに再び空襲の鐘。今度はゼロ戦への火災が描写され、兵隊が包帯だらけになりお母さんに会いたいと嘆いている。この科白を特に軟弱と非難しているようでもない演出があった。
森は戻ってきて飛行機は収穫なし、飛行機ほしいのはここだけじゃないと報告。河野は飛行機がなくっても戦ってみせるといきり立つ。翌日に森は他の隊に飛行機回すとの指示を説明し、ゼロ戦はブンブン飛び立つ。そして三度空襲、赤十字のテントにも被弾し包帯だらけの兵は殺され、さらには教会もやられて島民(三島は土人と呼んでいる)も逃げ惑う。東山の店もやられて、捕虜をわしに殺させろと訴える。この辺りずいぶん一方的な描写だが、現代でも侵略軍の誤射は茶飯事ではある。捕虜を詰る件があるが何で詰るのか判らず、これは占領軍の検閲で切られたのかもしれない。兵隊たちはひとり死んで十人殺せばいいんだろと貧しい算術で特攻を語る。
そしてゼロ戦が三機か四機やっと到着(肝心なところなのにここにドラマは特にない)。グラマン落として原住民はお礼の品持参してジャパン、ナンバーワンとか云っている願望描写。そして敵艦来襲。河野出撃にあたり藤田はお前早まるなと云って送り出し、森はよく云ってくれたと応じている。しかし河野は空母で部下に「敵艦のどてっ腹に自分の体をぶち込め、その他に何も考えるな」と特攻指示。基地から藤田も出撃。実写満載で銃撃の曲がる光線描写と鳴り響き続ける金属音が印象的。そして河野はおろか、あんなこと云っていた藤田も早まって特攻。ここはプラモになる。
44機自爆せりの報告を受け、大河内は涙浮かべてみんなよくやってくれると云い、森に飛行機の補充が間に合って良かったねと謝礼を伝達するのだったが、こんなことなら補充が間に合わなければ良かったのにという感想。情報局国民映画。東宝。大本営外軍報道部企画。キャストスタッフはタイトルに出ない。
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