[コメント] 青春☆金属バット(2006/日)
野狐禅のテーマ曲を聴きながら誰もいない夜道を歩いていると偶然、こういう人達に巡り遭ってしまったような敗北感。その上「俺達は仲間だ」と慰めてくれる、敗者にしか分からない痛切な感情が観る者の心に迫ってくるような、そんな稀有な映画ではないだろうか? (「稀有」というか、普遍的な青春映画と呼ぶ方が相応しい気もする)
熊切監督曰く、これは現代の日本を舞台にした『ゲッタウェイ』です、とあからさまに70年代のニューシネマへの触発を語る。
海外でこの映画を上映すると「現代の閉塞した若者達の状況をリアルに描いた」社会派作品と見られる事が多いらしい。でもそれはちょっと違うだろ、と違和感を覚えるのだが。
たしかに現代の病んだ人達が無法者の如く暴れたり、不愉快極まる暴力や犯罪をこの映画ではモロに切り取ってはいるが、それは監督が「善人より悪人の方に共感してしまう」という体質でそうなったと言える。これはまさにアメリカン・ニューシネマと同様のコンセプトであり、『時計じかけのオレンジ』の再構築であり、アンチ・ヒーロー賛歌なのである。
この監督が学生時代に観て感動した『キッズ・リターン』を自分の手で撮りたいという欲求、グロテスクへの傾倒、正常なものより異常なものに対する執着、こういった要素を自作でブチ撒けられる監督の意気込みだけでも大いに買いたい。僕が本当に求める映画の感動がここにある!
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