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[コメント] ハードキャンディ(2005/米)

オープニングから、洗練された映像に緊迫感が高まる。だけど、得てしてその手のサスペンス物は、何か芯の部分が緩いというか、何も無い映画が多く、この作品も御多分に漏れない。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







ロリコン男を葬り去った少女が最後に赤いフードを被って森の中を歩いていく場面は、“赤ずきん”を連想させる。要は、狼に簡単に騙されて喰われるのではなく、逆に狼を騙して抹殺する、必殺仕置き人のような赤ずきんちゃん、それがこの映画のヒロイン。

しかし、この少女がそこまで復讐心に燃えている理由がいまひとつハッキリしないし、自らの身を危険に晒してまで狼の懐に飛び込む動機が、単なる正義感だけだというのは、現実味が無さすぎる。一個の寓話乃至ファンタジーとして見ても単純すぎるし、動機は観た方のご想像にお任せします、という姿勢なのだとしたら、余りに投げ出しすぎな印象。

気弱で純朴な雰囲気の少女から、突如、冷酷な刑の執行者に変わるエレン・ペイジの演技力は見上げたもの。だが、台詞そのものには現実味が無くなっていく。余りにも滔々と喋りすぎている。会話劇としては巧く書かれてあるのだが、巧く書かれすぎており、作り物めいた印象が拭えない。これは脚本のせいだろう。

この少女が、冷酷なマシーンとしての完璧さに至らず、カメラマン宅の近所のトクダさんが訪ねてきた時には、焦って妙な言い訳をしてしまう拙さなどは、ちゃんと14歳らしい現実味が感じられるし、同時にサスペンスとしての緊張度を高めている。だが、犯人が最後に、自分の性癖をあの女性に知られたくないが為に自ら首を吊るという選択は、観客に充分納得させるような説得力をもって描かれていない。少女の動機も含め、肝心な所がこの映画ではボカされており、人間よりも、背後に隠れてあるべき図式の方が目立ってしまう。

この映画を作った人たちに、実際に幼児ポルノに対しての義憤が有ったのかは知らないが、殆どそれだけで作ったような印象を与える。正義感と、センスだけで作った、単純な映画?或いは、この映画そのものが、ロリコン趣味な上に、少女からいたぶられ、蔑まれたいという、M男的変態的願望に満ちているとも言えなくはない。結局、あの去勢手術は嘘だったし(この落ちは途中で予測がついてしまった。氷を局部に置かれた男に感覚が無くなっている事を確認する少女の様子や、ビデオで間接的に手術の様を見せるという辺りで)、ロリコン趣味を恥じながらもそこから逃れられない男にとっては、少女に殺されるというのは、或る意味、幸福な解決なのではないか?

(評価:★3)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)Tony-x[*]

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