[コメント] 秘めたる情事(1958/米)
いかにも脚本家出身の監督にありがちな演出の弱さを感じる映画だ。それは表面的にはプロット構成が性急だったり、人物が浅薄だったりと、まるで脚本段階の失敗のように感じられる点でも共通している。つまり力のある演出ならば、少々脚本が悪かろうと、いやそういう部分をこそ、映画的な魅力に転換することができるのだ。
**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
ちょっと気になった部分をあげつらうとすると、まず、ゲーリー・クーパーの娘のダイアン・ヴァーシを主体とした回想構造を取る本作の構造自体が分りづらい。あと、彼女とトランペット吹きのスチュアート・ホイットマンとの結婚、妊娠、結婚の取り消し、堕胎。このあたりの描き方は性急過ぎるだろう。また、クーパーとスージー・パーカーとの恋に落ちる展開も出来すぎだ。そしてクーパーの妻、ジェラルディン・フィッツジェラルドがとことん悪女として描かれる、この描き方も浅薄だと思う。
と、ちょっと辛めに難点を上げました。しかしこれらの難点は、完成した映画だけを見る我々観客にとっては脚本段階の問題なのか演出の問題なのか、或いは編集の問題なのか俄かには判然としないのだが、ただ本作は監督が名脚本家というだけでなく、チャールズ・ブラケットが製作者なのだ。ルビッチ、ホークス、ワイルダーの脚本家だった人なのだ。プリプロダクションにおける完成度はある程度保証されていたと考えるのが自然だろう。
もっとも本作のレベルであってもハリウッド黄金期の残滓を十分に感じることが出来るわけで、クーパーとスージー・パーカーのメロドラマについても、いかにご都合主義であろうとそれはそれで楽しめるのだが。
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (0 人) | 投票はまだありません |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。