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[コメント] LOFT ロフト(2005/日)

新緑というよりはコケや藻。静かにカラダとココロを侵食する緑。映像センスとホラー演出は素晴らしいと思う。しかし、そんな映像から見事に乖離してしまっている説明的な独白の洪水。あんたら一体誰に話してんの、と何度も思ったさ。
くたー

ガラス越しの豊川中谷の遭遇も印象深いし、中谷が室内を逃げ惑う姿がいちいちキッチリと計算されているし、幻想シーンも悪くない。霧や雨や泥や日差し、そして影。さらには美術や小道具も見るべきものがある。なのに・・・なんでこんな登場人物にイチイチ言葉で説明させるような話にしてしまうのだろう、と何とも(勝手に)もどかしくなってしまう。しかもその言葉やセリフの一つ一つが、とても選び抜かれているようには思えない。

意味の薄い話とか、ナンセンスとか、荒唐無稽とか、支離滅裂とか、そんなのは根本的な弱点ではないと思う。こんな密度が濃く自己主張の強い映像の中で、なんで登場人物たちがわざわざ心で思っていることをイチイチ言葉にして説明するのか。朗読のためのイメージ映像とはワケが違うんだから、などと思ってしまう。

そこでフとヌートリアEさんのコメントを拝見して思ったのは、LOFTというタイトルの意味。屋根裏部屋。もしかしたらこれは、黒沢清という映像作家のごくプライベートな「屋根裏部屋」的位置の映画だったのでは、と。別に深遠な意味があるワケじゃないんだから、もっともっと意味など解体して、私的に屋根裏にしまっておいた宝物とか記憶とかの寄せ集め、コラージュにしてしまえば良かったのに。

・・・などと勝手に個人的な要望を暴走させて頂いて、一つ熱烈なリクエスト。黒沢清にしか作れない、黒沢清版の『』が観たい。

(2007/2/18)

(評価:★3)

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