[コメント] 稲妻(1967/日)
続いて浜木綿子の店。傘屋。姉の稲垣美穂子が来ている。4人ともお父さんが違う話をしているが、お互いに、相手のことをカスケと同じお父さんかと思っていたと云う。稲垣が長女、浜が次女、倍賞が三女で、稲垣と浜の間に長男のカスケがいるということだろう、柳沢真一がやっている。稲垣は浜の家に写真を置いて行く。藤田まことはこの写真で登場する、両国のパン屋さん。この後、度々、馬面をイジられるのは、いつものことだが、やっぱり可笑しい。写真を見て「長いな」とか「長いわよ」とか「顔を」という言葉を省略しても皆通じ合っている。
もう少し配役を書いておくと、4人の母親が望月優子。彼女も本作の肝になる役。稲垣と浜の夫はそれぞれ穂積隆信、田口計だ。田口は、後で稲垣の馴染みだったという科白がある。稲垣は水商売をしていたということだろう。確かに本作の稲垣、まだまだ綺麗というか、3人の中では一番艶っぽい。また、倍賞は浜の家に居候していて、稲垣が藤田の写真を置いて行ったのは、倍賞の相手にどうか、ということだ。そして前半の作劇上の転機は、浜の夫−田口の事故死。親族が病院に集まっているところへ稲垣だけ遅れて来るが、その日、稲垣と藤田とが会っている場面(酔った稲垣を藤田が車で送る場面)を観客は先に見せられており、多分そういうことになったのだろうと思わせられる。
というワケで、藤田が倍賞の家族を引っ掻き回す役割を担い、さらに、浜に入った生命保険の金もプロットをドライブするテコになる。実に面白いお話なので書きたいことはいっぱいあるが、長くなり過ぎるので、良いと思ったシーンを書いておく。まず、浜と倍賞が風呂帰りだろうか、隅田川を見ながら昔は渡しが通ったという話をしたり、いつか喫茶店をしたいと浜が云う、しっとりとした場面(場所は佃島だと分かる)。あと、家族でスキ焼きをしているところに藤田が来て穂積と喧嘩になる場面。スキ焼きの鍋と材料をぶっちゃけたのを見て狂ったように怒りだす望月。この望月が全編で一番笑えた。あるいは、浜が神田に開いた喫茶店でのキャットファイト・シーン。手前に浜と稲垣、奥のカウンターに倍賞を縦構図で見せる。倍賞を置いて2階に上がった2人が喧嘩をし始め、階段を落 ちて、ノコギリで斬りつけようとするところまで描くのだ。この間、倍賞に、あんな2人は放っておいて、どこかへ行こうと云う藤田。本作の画面の特徴として、屋内のディープフォーカスによる縦構図が頻出し、効果的に使われていることは書いておくべきだろう。
そして、クライマックス、というか、タイトルにある稲妻が物理的に描かれる望月と倍賞の修羅場のシーン。こゝも画面右に倍賞、中央奥に望月、という縦構図だ。望月の、産みたくって産んだんじゃ無いよ!そういう法律だったんだよ!という科白がいい。稲妻は成瀬版と違って、ちゃんと雷鳴が聞こえるので、やっぱり意識して違いを出しているのだな、と思う。ところが、ラストのラスト、佃大橋(多分)の側道の階段を上って、橋の歩道を歩いて行く倍賞の後ろ姿の(少しズームアウトする)ショットで、右上の空に音の無い稲光りが見えるのだ。いや、これにも感激する。
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