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[コメント] 硫黄島からの手紙(2006/米)

フジテレビ系にてOAされた伊藤淳史主演ドラマ「硫黄島〜戦場の郵便配達〜」の方が硫黄島の悲劇がひしひしと伝わる。
HILO

硫黄島の一番の売りは地下要塞を駆使したゲリラ戦。

後のベトナム戦争でも硫黄島の戦い方を真似たゲリラ戦がアメリカを苦しめ、 米軍最大の汚点とまで言わせた。 そんな戦史に残る硫黄島のゲリラ戦なのに、 本編についてはエビソードの一つ程度にしか描かれてない。 栗林中将のヒーロー像がメインとなりアメリカ仕込みの戦略に賛否が起き、 抗争にまで発展する。

まあとにかく無茶苦茶な映画である。 クリント・イーストウッド監督作品と言えば箔が付いてるが、 蓋を開ければ最低の戦争映画ではないか。

現実との矛盾点

その1.日本の軍人はアメリカの海兵隊みたいにジョークは言わないし皮肉も言わない。 西郷昇陸軍一等兵(二宮和也)はユーモラスな兵士として描かれているが、 現代の自衛官ならともかく、 第二次世界大戦中の大日本帝国軍人があのような軽い性格というのはありえない。

その2.栗林忠道陸軍中将(渡辺謙)の軽さ。 いくらアメリカ帰りだからって大日本帝国軍人としてしかも上級上官として、 あの軽さは無理がある。

その3.伊藤海軍大尉(中村獅童)の単独行動。 アメリカ仕込みのやり方が理解出来ずに反論するのは仕方ないとして、 命令違反や抵抗は御法度である。 特に上官命令は絶対であり上官が死ぬと言えば命令に従い死ぬのが当時の考え方である。 国家反逆罪だの軍法会議だの司法が通用するのは米軍だけで、 大日本帝国軍にそんな現代的な考え方はない (天皇主義においては個人より国家優先である)。 なのに命令に逆らい部下に万歳突撃や玉砕を命令し、 理不尽な命令も天皇の名の下に大義名分を強制する。 確かに天皇第一だが先ずは上官の命令には絶対服従が鉄則であり、 命令に逆らうという考え方自体がまずはあってはならない。

他にも色々あるがとにかくクリント・イーストウッドも所詮はアメリカ人であり、 日本人の根本的な考え方はやはり実力社会で育ったアメリカ人には理解出来ないらしい。

戦時中と現代では平和主義として反戦が当たり前ではあるが、 上司に逆らえば首やリストラだし、 警察官や医師等の専門職と言えども所詮は雇われの身でサラリーマンに過ぎない。 警察官は公務員だし軍人みたいな強制力はないにしても、 上司に睨まれれて窓際族へ左遷されるのは死ぬより辛い。

いくらバブル経済だろうが平成大不況だろうが、 日本は官僚主義の縦社会であるし民間は体育会系が殆どである。 更には派閥社会だし学歴社会である。 中卒でもそれなりに出世出来るのはタレントと職人くらいであり、 一般社会や官僚社会においては実力社会はアメリカ向けの建前でしかない。

(評価:★1)

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このコメントを気に入った人達 (1 人)neo_logic[*]

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