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[コメント] ボウイ&キーチ(1974/米)

アクション演出が凡庸さにすら達しないアルトマン。むしろその抑制が、高揚無きシニカルなアウトロー浪漫を醸し出すが、そんなにシニカルな目で見るのなら最初から撮ることないのにと思える単調さが苦痛。
煽尼采

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







「キチキチクー!」と鶏の鳴き真似を嬉しそうにやる、いい年をした大人たちの幼児的ナンセンスを全篇に渡って炸裂させる様を延々、淡々と捉えているだけの単調さが些か苦痛。銀行強盗三人を匿うマティーは彼らに、嘲るような冷めた目を向けながら邪険に扱うが、彼女の通報によってボウイが一斉掃射を浴びる結末も含め、マティー的な眼差しが映画そのものにも一貫しているせいで、観ているこちらも冷めてしまう。

銀行強盗のシーンにしても、事が行なわれているであろう銀行の前に車を停めて待っている待機時間だけを捉えていたり、銀行内を捉える際も、距離感のある俯瞰ショットを採用し、何も知らず銀行に入ってきた客を次々と然るべき場所に移動させ静かにさせる強盗側の手際のよさ(というより、脅される側としての役割を即座に了解し行動する客の物分りのよさ)を淡々と描く等、アウトロー物としての派手派手しさを完全に排した演出。

冒頭のタクシー運転手との遣り取りの妙味や、終盤、ボウイがチェカマウを脱獄させるシーンの、あまりに警戒心の乏しい警備体制のとぼけた味わいなど、高揚感を排したことによる可笑しみが活きている箇所もあるのだが、その軽妙さが全篇に渡って染み透っているわけでもなく、中身スカスカの、砂を噛むような虚しさの方が強い。また、軽さとの対照となる厳しさが配されているわけでもない。最後にボウイが、隠れた小屋の外から一斉掃射を受けて絶命するシーンにしても、派手なのは恋人・キーチの嘆きようだけであり、本来なら最も派手なシーンであるにも拘らず、この蜂の巣シーンでさえやはり冷たく淡々としている。

ラストカット(=エンドロール)のショットに漂う、全ての事象を緩慢な時間の流れに呑み込むような空気感はさすがアルトマンと思えるものがあるのだが、これの為に退屈な二時間を過ごす意味があるのかどうなのか。結局、何となく漠然とした後味しか残らない。

(評価:★2)

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