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[コメント] ロバート・アルトマンの イメージズ(1972/英)

これも傑作。面白い!建物の外壁にある風鈴。カメラがティルトダウンすると窓の向こうの部屋にキャスリン−スザンナ・ヨークがいる。何か書きながら、お話を読み上げる。「一角獣を探して」という童話。作家か。
ゑぎ

 屋内にも硝子の棒が房のように付いている風鈴が出て来る。以降、ガラスの風鈴は、この部屋の中だけでなく、他の建物や、自動車のフロントガラスにも付けられている。本作も窓やガラスの映画だ。

 一方。本作は、明確な電話の映画でもある。電話を使った演出は、序盤のキャスリンの自宅のシーンが顕著だ(終盤でも、公衆電話が印象的な使われ方をするが)。最初は友人からの電話か。しかし混線したのか、知らない女が、夫のヒュー−ルネ・オーベルジョノワが浮気していると云う。今考えると、これは、キャスリン自身の声ということか。しまいに、部屋中の電話(4カ所ぐらい)の受話器が外されることになる。

 そして、帰宅した夫のヒューとのキスシーンで、いきなり別人(しかも、マルセル・ボナフェ!)にすり替わっているという演出には驚愕する。私は何よりもこゝが好きだ。以降、ボナフェの登場シーンは全部可笑しい。ただし、この怖さが継続するのかと思ったのだが、最初だけキャスリンも吃驚するけれど、二回目から怖がらないし、知人−ルネの幽霊と判明するので、怖さが低減するのは、トレードオフだろう。

 しかし、この映画が本当に面白くなるのは、キャスリンの故郷の別荘(確かグリーンコーブと云ったと思う)へ行ってからだ。まずは別荘へ向かう途中の道が山の中腹にある、その遠景ショットからして壮観だ。大きな川。近くに滝もある。道から外れた、丘のような崖上の場所からキャスリンが見下ろす大俯瞰。キャスリンの分身が別荘に入って行く。切り返して、別荘側から崖上に小さく人(キャスリン)がいるのが見える逆光ショット。こゝから別荘側のキャスリンが本人になるという、ドッペルゲンガーと本人をすり替える演出。続いて、別荘の2階で足音が聞こえる辺りまで、ホラーとしても、とてもよく出来ていると思う。またも、ルネ−ボナフェが出現する。

 さらに、幽霊のルネだけでなく、昔からの友人マルセル−ヒュー・ミリアスとその娘スザンナ−キャスリン・ハリソン(13歳ぐらい)も加わって、どんどんカオス状態になるのが面白いのだ。例えば、夜、キャスリンは、幽霊のルネを受け入れる(つまりセックスをする)のだが、そこから回想の連打となり、ルネ、マルセル、ヒューとのかつての逢引き場面が挿入されるのは、それは回想ということだけでなく、その夜、3人の男と激しい情交を結んだということなのだろう。しかし、3つの回想とも同じよう演出なのが可笑しい。あるいは、夫のヒューはルネと入れ替わるし、キャスリンはルネを散弾銃で撃つし(幽霊を殺したことになる)、マルセルをナイフで刺す。そして、キャスリンとそのドッペルゲンガーは、ヒューや少女スザンナとも入れ替わるのだ。

 さて、本作の撮影者は『ギャンブラー』や『ロング・グッドバイ』と同じヴィルモス・ジグモンド。やはり、緩やかなパンとズームを使ったカメラワークだが、どちらかと云えば『ギャンブラー』に近いカメラの使い方だ。『ロング・グッドバイ』は、こゝから一歩進んだ、心地良いことこの上ない浮遊感を実現していると思うけれど、本作のカメラワークも、この題材に対して、ということで云えば、間然するところの無い完璧な出来ではないだろうか。また、ツトム・ヤマシタのパーカッションも加わった和楽のような劇伴の効果も大きい。

#劇中で朗読される童話「一角獣を探して」の原作者はスザンナ・ヨーク。

#役名と演者の名前(ファーストネーム)が互い違いになっている。ややこしい。

(評価:★4)

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