[コメント] 風の中の子供(1937/日)
映画を見終った人むけのレビューです。
これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。
何といえばいいのか、時折微妙にトーンが変わったりして、全体を通すとやや雑然とした印象もあるのだけど、それもあまり気にならない程さまざまな魅力に溢れた作品でもありました。雑感として、箇条書きでメモしておきたいと思います。
・野外撮影の素晴らしさに惚れ惚れ。何といえばいいのか、背景としての自然を撮影しているというより、自然と人間の一体感そのものを撮っているといえばいいのか。おぢ貴が馬で追いかけるクダリでは人と馬、そして風の三位一体を撮り、三平が流されるクダリの川自体のうねりときらめき。もう物語の顛末とは関係なしに漂う、これらの幸福感は何なんだろう。
・子供独特の喜怒哀楽の表出に惚れ惚れ。感情のほどばしりをどう表現してよいのか分からず、勝手に体がでんぐり返ったり意味不明に言葉を繰り返したり。その不恰好な感情の塊が素晴らしいのです。ラストの相撲を取りながら泣き出してしまう三平の可愛らしさといったら・・・。ともあれ、子供に対して決して演技を「つける」のではなく「引き出す」、という基本姿勢が如実に伝わってきます。
・編集などのテンポの良さ。この題材を子供視点を貫いて描けたのは、このテンポのおかげもあるでしょう。ただし、大人メインのクダリになると、場の空気も含めて若干演劇臭いかな、という印象もあり(ことに橋での母と子のクダリなど)。
ともあれ、清水宏監督作品二本目の鑑賞(ちなみにもう一本は『有りがたうさん』)であれこれ言うのも何ですが、殊に上記2点に関しては、ほのかにルノワール的な匂いすら感じました(言い過ぎかな)。かなり好みです。
(2007/1/19)
(評価:
)投票
このコメントを気に入った人達 (2 人) | [*] [*] |
コメンテータ(コメントを公開している登録ユーザ)は他の人のコメントに投票ができます。なお、自分のものには投票できません。