[コメント] 天使の影(1976/スイス=独)
すると、歌を唄う2人のツーショットに。そこに、男がやって来て、一人ずつ誘われて行く。1番目は、卑猥な歌を唄いながら指名する(私は、一瞬これがファズビンダーかと思った)。2番目が、ユダヤ人の金持ちに雇われている男−ウーリー・ロメル。胸の大きな女を捜していると云う。大きいといっても、ユダヤ人の金持ちはマザコンだから垂れたのがいいと云う。太った娼婦を連れて行く。このように順々に女が減っていき、残った2人の内、一人は、エマ−イルム・ヘルマン(『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』の助手−マレーネ役の人)。そして、エマも男とその場を去り、最後に残ったのがリリー−イングリット・カーフェンだ。この後、彼女は捨て猫を弄ぶのだが、殺したのだろうか?投げ捨てる仰角ショットがある。また、この後のシーンでも猫が出て来るが、生きているようには見えない。
続いてリリーの部屋。彼女のヒモのラウル−ファズビンダーのいる部屋だ。ラウルは、殴るのは愛だと云う男。帰って来たリリーに、もう一度行け。金が無いと仲間に大きな顔ができない。そこで、リリーは外に出て、この建物の一階だろうか、男に声をかけられるのを待つ。そこにはエマともう一人の先の娼婦がいるが、一人の男が、リリー以外の2人を連れて行く。リリーは、また、あぶれたのかと思いきや、金持ちのユダヤ人−クラウス・レーヴィッチェと部下2人が現れる。橋の下のシーンでも出てきたロメルの他に、小人(ドワーフ)と呼ばれる大きな男−ジャン=クロード・ドレフュス。こからリリーの人生が変わっていく。
本作もレナート・ベルタの撮影の特質はよく出ており、全編に亘るローキー気味の照明もいいし、特に移動撮影の快さが抜きんでている。例えば、リリーがユダヤ人−レーヴィッチェに囲われたということなのだろう、唐突に木造の大きなアパートで暮らしていることが分かる場面。こゝはラウル−ファズビンダーが、出て行くと云う場面でもあるのだが、このシーンの終わりに部屋の奥まで後退移動するショットに歌が挿入される処理がカッコいい。他にも、部屋の奥に後ろ姿で立っているカーフェンがおり、カメラがゆっくりと前進移動して行き、回り込んでバストショットに捉えるシーケンスショットも素晴らしい。あるいは、唐突なストップモーションの活用や、アイリスアウト、アイリスインの処理といった演出の茶目っ気は、シュミットらしさだと思う。
あと、リリーのお父さん−アドリアン・ホーフェンは、なぜか女装して歌手をやっているのだが(全然上手くない歌手だが)、この人が出てくると、なんだか可笑しい。後半になって、この女装のお父さんのステージもあるバー・クラブのシーンが増える。この場面には、金持ちユダヤ人の子分で、小人と呼ばれた男もおり、彼の存在感も抜群だ。カーフェンの退廃的な存在感が際立つ女優映画ではあるけれど、出て来る男優のルックスも、皆カッコいい。
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