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[コメント] お小夜恋姿(1934/日)

狂った躁状態の実に奇怪な作品で、面白くもない子供の思いつきのような無茶苦茶。これでも草創期には前衛的な挑戦だったのだろうか。本作には脚本が表記されないが、城戸が怒って載せなかったのではないか。
寒山拾得

**ネタバレ注意**
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晩年の有吉佐和子は躁病だったらしく多情なだけでまるで詰まらない作品を書いて周囲を困らせたという逸話が想起された。序盤の坪内美子の意味のない半裸など悪趣味である。

無茶苦茶は話と話の接続部の処理にだけ生じていて、前半の坪内の自殺の逸話はそれなりに完結している。亡父の漫画のような肖像画は、彼が画家だったというのはこの一家の幻想ではないのかと疑わせられるし、友人の宮島健一の『狂った一頁』の狂人のような造形は現実離れしているが。坪内の自殺の件、急流を覗きこむだけなのだが、このショットはいいものだ。

そかしこれが斎藤達雄の小説家の創作だというオチがつき、作品は迷走の度を増す。別にそれに伴って得るものがあればオチだってあってもいいのだが、本作にそんなものはない。ただ斉藤の薄ら寒い頭の中に付き合わされたというだけで、誠にバカバカしいのだ。

本作の見処はこの周辺の斉藤と田中絹代の安定したコメディ。しかし終盤は河村黎吉の絹代への訳の判らない懸想話になり、これがまた意味不明。なんなのだろう。

パートトーキーで、音の使い方も思いつきの躁状態のよう。「クラブ歯磨」の広告は本作にも出てくるが、松竹蒲田は提携していたのだろうか。

(評価:★2)

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