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[コメント] 人生は、奇跡の詩(2005/伊)

イタリア人の情熱って暑苦し…熱いですね。
甘崎庵

**ネタバレ注意**
映画を見終った人むけのレビューです。

これ以降の文章には映画の内容に関する重要な情報が書かれています。
まだ映画を見ていない人がみると映画の面白さを損なうことがありますのでご注意下さい。







 かつて『ライフ・イズ・ビューティフル』(1998)で号泣した。これだけで遠いシネコンまで足を運んで観るモチベーションは充分。しかも期待にそぐわぬ良質作品だった。  だけど、映画観ている途中では実はそうは思ってなかった。

 理由は簡単。ベニーニ演じる主人公の造形がどうにも嫌いだったから。特に最初の方の描写。二人も娘がいて、妻と別居までしているというのに、女性に夢中になって、悪びれる事がない。ましてや片思いで結婚まで夢みているなど、羨ましい碌でもない男にしか思えず。私は家族崩壊の物語が苦手だし、主人公のちゃらんぽらんさがどうにも気になった。ひょっとしてイタリアのプレイボーイってこういうものなのだろうか?

 それが変わってきたのは、途中で愛するヴィットリアのため、どんな無理をしてどんな嘘を言ってもイラクまで行ってしまうという行動を観た時から。あらら、情熱家ってのは分かるけど、ここまで一人の女性のために尽くせるとは、激しい愛情だこと。

 で、言うまでもないが、ラストシーンでやられた。なるほどこう来たか。今まで私が不満に思ってきたことが、たった一つの事実で全て覆される。ここまで伏線を引っ張ってきて、全てを消化されたとあっては文句も言えない。又してもベニーニにやられてしまったよ。

 それに劇中における夢の結婚式の演出は白眉。光の持って行き方でキラキラと輝くシーンや、夢だけに不条理な出来事が起こる描写も良い。そもそも夢を題材にした映画って大好きだし、詩人トム=ウェイツ本人の歌う愛の詩も素晴らしい。

 概ねにおいては大満足。ただ、それでもいくつかは不満点が残った。

 『ライフ・イズ・ビューティフル』は民族浄化が主眼だったため、一般レベルに目がちゃんと行っていたが、本作では愛を強調するあまり、あまりにもイラクの人に対する描写がなおざりになってしまったし、アッティリオの目はそれしか見えてなかった。死を描くと話が重くなりすぎるし、政治的な配慮があったのかも知れないけど、ちょっとでもイラクでの生活レベルの描写があれば良かった。それに後半でのフアドの死もちょっと説明不足。何故彼が死なねばならなかったのか。内面の葛藤だとしても、それを匂わせる部分は必要だったはず。その分でマイナス。これがクリア出来ていれば最高評価になったのだけど…

 後、関係ないけど、本作を観たのはミニシアターで、本作のチラシも置いてあった。それを手にしたが、着いた時間がギリギリだったので目を通さずに映画本編を観て、その後チラシを読んだら…一番重要なところが完璧ネタバレになってるじゃないか。読まなくて良かった。

(評価:★4)

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