[コメント] 若者は行く −続若者たち−(1969/日)
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見処はリアルタイムの山本圭。就職面接でのジレンマはさもあらんという生々しさがある。新宿騒乱の虚実併せたセミドキュメンタリーなショットは印象的でこのインサイダーという設定だけでも貴重だろう。当然彼の主張が聞きたいのだが聞かせてくれない。何でもっと肉付けしてくれないのだろう。江守徹との喧嘩も内容が薄い(江守が新左翼で山本は日共という描写なのか、どちらも新左翼のセクト分裂なのか)し、何で教員就職が近隣でなく南島なのかよく判らない。
ともかく詰め込み過ぎだ。何でこんなに詰め込むのか理解できないし、幾ら名優たちでも五人がかりで激論されるととさすがに煩くてかなわない。佐藤オリエの反原爆デモへの突入は短いながら印象的。田中邦衛のアパート経営の夢も山本との対照として必要だろう。しかし木村夏江の職場闘争は趣旨には適うが本来ならこれで一篇構える必要がありいかにも尺不足、辻由美子のヒステリーなど余りにもつまみ食いで彼女に失礼な印象がある。橋本功の三角関係はいっそ不要なのにと思う。
組合活動における労働者対学生というのは課題のひとつだっただろう。あくまでも公正な社会の希求という一点張りで突っ張る山本は学生として云うべきことを云っており、田中に理解してもらうのが望みなんだとの語り、「勉強して教えてくれ」という田中の回答は美しいものがある。時代の緊張を捉えたいい収束で、こういう部分はいいんだけど。
しかしベストショットはオーラスの佐藤オリエの笑顔。ごちゃごちゃし通しの本編と比べてこのシンプルさこそ映画じゃないのかと思ってしまったことだった。このショットはオルグに違いない。
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