原作からの変更点として個人的に最も気になったのは実は木村の女の性格変更でした。

世間ズレしまくった冷たいオバちゃんといった感じだったのが、純朴な瞳で「あの人、私がいないと駄目になっちゃうの」とか言いそうな感じのおねーさんになってるじゃあありませんか。やたらとアニメ声なのも相まってぶっちゃけ「生理こないの」と言うあの台詞には年甲斐もなくドキドキしましたとも。ええ。

それに伴って、まあその他諸々の演出の効果もあるんですが、木村のヘタレっぷりが大幅にパワーアップして、むしろ親しみが持ちやすくなってます。（木村に限らず、原作ではえらくドライだった諸々の心理表現がかなり湿っぽく描かれてますね。個人的にこの変更は好感持てました）

で、かてて加えてシロはともかくあまりクロに感情移入できなかった身としては、イタチが登場してからのひたすら長い心象風景以降は某エピソード２のアナキン坊やを見てるようで置いてけぼり感食らいまくっちゃったこともあって、この際木村を主人公にしてみちゃどうよ？　などと考えちゃったり。

…つか、彼のエピソードだけで映画一本普通に作れそうな気が。

宝町の独特の空気に当てられ正常な判断を見失い、親代わりのネズミを殺しまたそれを強要した蛇も殺す。

どん底まで堕ちた代わりにほんの少しの人間性を取り戻した木村は青臭い夢を語りつつ、身重の女と共に町から逃げ出そうとしたその矢先に組織の報復に遭ってしまう。

銃声と共に暗転。そして聞こえる女の囁くような声。「産まないわ。男なんて絶対産まない」そしてスタッフロール。

結局彼もまた、激動する時代の中で揉まれ、消えたいった小さな一個人に過ぎなかった。完。

…おお。ほらなんかフィルムノワールみたいで渋カッコいい気がしませんか？　

下町な美術も雰囲気に合ってそうやし。

え？　「ネタが古臭い」？　「暗くて売れない」？　「そもそもそんなの鉄コンじゃねえ」？ す、すいません。

やっぱ普通に子供が手振れ上等な画面中を所狭しと暴れまわってる方が面白いのかなあ。

そもそもこの映画、何より「動き」が魅力だもんね。