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[コメント] それでもボクはやってない(2007/日)

待望の新作!! まさか10年以上も待たされるとは思わなかったぁ。
Linus

周防正行、と言えばなんだろー。 蓮實重彦一派? というイメージでしょうか。

黒沢清、周防正行、青山真治、塩田明彦。 これらの監督って、立教大学出身ですよね。で、蓮實重彦が 立教に映画の授業を持っていて、かなりの影響を与えた。 なんつーことは、本で読みました。 (青山監督&塩田監督が授業を受けたかは、よくわかんないですけど…) 実際、蓮實ゼミにいた人のハナシを聞いたことがあるのですが、 「毎日、映画館で1本観る」というのが課題らしくて、人気のゼミでも 終わるころには課題がキツクて、ついて来れない人が続出だったらしいです。

ずっと蓮實重彦という人物は批評家のトップに君臨する方で、 エライんだ、と思っていた時期も、私にもあるのですが、果たしてそうなのか? という疑問と、周防監督は、早々に卒業していたんだろうなーと、 「それでもボクはやってない」を観て実感しました。

つまり、映画は誰のモノなのか? という素朴な疑問に対して、 周防監督は、観ている人(大衆)のモノです。を貫いた人なのだと。

いや。たぶん周防監督にも、自分のために撮った映画はあるのでしょう。 それは『変態家族兄貴の嫁さん』だったはずだ。 だって趣味の世界が全開で、私、観ても意味不明で全然よくわからなかった もの(笑)。しかも、監督、小津の写真入りトレーナー着て撮ったらしいし。

なにしろピンク映画のサードの助監時代は、5年間ほとんど休みなしで、 ギャラは1本につき、1万5千円くらいだったそうである。 助監時代は、高橋伴明監督、若松孝二監督、井筒和幸監督についていて、 あまりに仕事がハードだったらしくて、こんなにコキ使われるなら(?) ピンク映画を1本撮らせてもらうまでは、助監をやめないでいようと 思っていたそうである。(っていうか、今、10年前にワイズ出版から出された 「周防正行の世界」という本を再読しているが、なんか凄いわかります…。涙、涙)

インテリからヤクザまで。

なーんて某新聞社じゃないけど(笑)、かなり幅広い人脈と接してきたのが、 周防正行という人なのかもしれない。そして、これが周防正行の持ち味なのだ。

周防監督のストライクゾーンは、大衆性のあるインテリ。 ただのインテリに収まらないところが、妙技だ。 映画ファンというのは、とかくインテリであるべきだ。みたいなトコがある。 マニアになればなるほどそうで、青山真治×阿部和重×中原昌也の鼎談なんて 読むと、どうやら映画のハナシをしているみたいなんだけど、その内容はわからず、 本人たちはディープであることが良いのかもしれないけど、バカは映画観んな!  みたいな感じで、蓮實シンパらしい口調で語られている。

別にこの3人が嫌いでもないんだけど、映画ってもっと沢山の人が観るべきモン じゃないのかなー? というのが正直な感想です。100万人動員したと言っても、 視聴率で言えば、1%。全人口の1/100にも満たない。 しかし、お金を払って100万人を集めることほど難しいこともないのだろう。 このことを周防正行は十分にわかっているからこそ、大学時代は生粋の 蓮實チルドレンであったにもかかわらず、エンターテイメント寄りで(それはピンクという現場で鍛えられた?)、上質な大衆性のあるインテリ映画を撮れる監督に なったのかもしれない。それはインテリや大衆の短所を熟知したからこそ、 それらの長所や持ち味を引き出すことに成功したのだろう。

でも、よく考えたら、周防監督って1987年に「マルサの女をマルサする」という 伊丹十三監督作品のメイキングを発表しているんですよね。どっちかというと、 伊丹十三の系譜を引き継いだのが、周防正行なのかもしれない。 そして私はと言えば、周防監督の作品から邦画という世界にどっぷりと ハマリこんだ人間でもあります。

周防正行にハズレなし。今回もそう思えるほどの極上のエンタメ作品。 でも……もう10年は待たせないで下さいね!

(評価:★5)

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