この映画はとにかく人物描写に厚みがない。うっかりしていると人物の区別が付かなくなるほどだ。特に男性陣の魅力のなさはつらい。浮気して裏金使ってヤクやってと、そんな小ざかしい悪事を重ねる男の姿を人物を見せられても、感情移入できないのはもちろん、ただただ不愉快な気分にさせられるばかりである。

この映画で唯一しっかり人間が描かれていたのがエフィだが、彼女にしても、なぜあんなダメ男に固執するのか理解できなかった。熱烈に愛を歌い上げても、肝心の相手に魅力がないから全く説得力がない。

舞台を直に観ているのでない分、生歌の迫力はオミットされているのだから、それぶん人間像や物語をもっと掘り下げて描く必要があったはず。もともと練り上げられている舞台の曲をただそのまま流すだけなら、そもそも映画である意味すらないと感じてしまった。