タイトルでもっと派手な話を想像していたら、意外に味のあるブラックコメディだった。テイストはコーエン兄弟風。一つの事件からどんどん深みにはまっていく愚かな人間を描いているのがまさにコーエンっぽいし、登場人物が皆どっか頭のねじが緩んでいる感じなのも似ている。なかなか面白い構図のショットも時々ある。役者では木村祐一が凄く良い。演技が上手いとかそういうんじゃなく、顔がいい。ただ黙って立っているだけで笑えてしまう。あ、あと、三浦友和のダメ人間っぷりもかなり凄い。

　テーマは「田舎はすごく怖い」…かな。昔何かのコントで、「都会よりも逆に、田舎の方が怖い」といった台詞を聞いたことがあるけど、全くそのとおりだと思う。自分は高校を卒業してから東京に出てきたけれど、田舎に住んでいた頃はずっと、「東京は怖い」というイメージがあった。だが今になって田舎での生活を振り返ってみると、東京よりも田舎の方がずっと陰湿で不気味だったと思う。 　東京では、他人との関わりは田舎に比べて浅いし、いざとなれば逃げ道はどこにでもある。接してみて嫌な人だったら、その後一生関わらずに生活する事はできる。一方田舎はある意味閉じられた世界で、逃げ道がほとんどなく、その中で濃密な人間関係が存在する。嫌でも顔を合わすことは多いし、ちょっとした事件もすぐに周囲に噂になってしまう。何かそんな事を、この映画を観ながら思い出してしまった。